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5月5日付 編集手帳

 何年か前、日本一短い手紙のコンクール「一筆啓上賞」の優秀作を読んで感じ入り、手帳に書き留めた。〈今までに、私をフッてくれた人たち、ありがとう。おかげでこの息子に会えました〉。作者は若いお母さんである◆子をもつ親の胸を一度はよぎる感懐だろう。失恋した相手にお礼を言うだけでは足りず、その人を横取りしてくれた恋敵に感謝した人もいるかも知れない◆志望する会社に受からず、仕方なく入った別の会社で伴侶を得た人ならば、落としてくれた面接官に礼を言うだろう。わが子とめぐりあえた喜びは、いつの世も人を“感謝の(とりこ)”にしてきた◆その心を忘れてしまう人もいる。腕にアイロンのヤケド跡を残し、1歳児並みの体重で餓死した智樹ちゃん(5)、ゴミ箱のなかで窒息死した優衣ちゃん(2)…親からの虐待を受けて短い生を終えた幼子の名前がいくつか、脳裏に明滅するなかで迎えた今年の「こどもの日」である◆どこかの悩めるお父さん、お母さん。過ぎし日、あなたを感謝の虜にしてくれたわが子の笑顔に()てて、短い手紙を書くのもいい。「ありがとう」と、たった5文字の。

2010年5月5日01時21分  読売新聞)
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