HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 60329 Content-Type: text/html ETag: "fd09a-1198-f57b1600" Expires: Tue, 04 May 2010 03:21:47 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Tue, 04 May 2010 03:21:47 GMT Connection: close 5月4日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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5月4日付 編集手帳

 「名もない草」という言い方がある。それぞれ名前があるのに、草に失礼だ、と憤慨する人もいるらしい。〈だが…〉と、作家の中沢けいさんが随筆に書いている◆もとは人間が勝手につけた名である。「名もない草」と呼ばれるのと、否応(いやおう)もないお仕着せの名で呼ばれるのと、草にとって〈どちらが失礼な話なのか、わかったものではない〉と(作品社『日本の名随筆〈草〉』)◆確かに「ヘクソカズラ」や「イヌノフグリ」などは、名前を呼ばれるたびに顔をしかめているような気もする。とはいうものの、「名もない草」や「名知らぬ花」でごまかしてきた身を顧みれば、草花の名に疎いことで人生の楽しみをひとつ棒に振ったような、悔いが胸をよぎらぬでもない◆絵の具の黄と青を混ぜると緑になる。見送った春の黄(菜の花)と、先に待つ夏の青(青空)、絵の具二つを混ぜたように5月は緑の美しい季節である。きょうの「みどりの日」を行楽の旅先で迎えた方もいるだろう◆花の名前ひとつを、草の名前ひとつを土産代わりに覚えて帰る。わが身を高い棚に上げて申し上げれば、そういう旅もいい。

2010年5月4日01時19分  読売新聞)
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