HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 01 May 2010 20:15:49 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:郵政法案 歴史の歯車が回らない:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

郵政法案 歴史の歯車が回らない

2010年5月1日

 郵政改革法案が閣議決定された。閣僚からは郵政資金を海外向けなどに融資する話が飛び交う。事業効率化に目もくれず、無駄の温床とされた財政投融資の復活では、歴史の歯車が逆回転する。

 病院などの国内公共施設や海外の原子力発電所建設にも投融資する−。郵政改革論議の最終段階になって亀井静香郵政改革担当相、原口一博総務相の口から唐突に新規事業案や構想が飛び出した。

 郵便貯金、簡易生命保険合わせ二百七十兆円。

 橋を三つも架け、利用予測を大幅に下回って一兆円を超す損失のツケを国民に回した本州四国連絡橋を忘れたかのようだ。公団などの特殊法人に郵政資金を流し、非効率な使われ方を許した財政投融資の事実上の復活ではないのか。

 いつか来た道に舞い戻る。法案をこう評しても言い過ぎではないだろう。それは二万四千の郵便局長で組織する全国郵便局長会(全特)の求めに応じ、鳩山由紀夫首相が丸のみした郵貯、簡保の限度額引き上げが根っこにある。

 郵便事業は電子メールなどに押され、じり貧だ。郵便局は収益の七割を、ゆうちょ銀行とかんぽ生命からの手数料に頼っており、経営安定には限度額引き上げによる資金量の拡大が手っ取り早い。

 しかし、亀井氏らは地域に根ざした中小企業などへの資金供給を掲げたものの、郵政グループは運用能力に乏しく、経験もない。そこで海外も含む成長分野への投融資をぶち上げたようだが、郵政改革の目的の一つである国民の利便性向上とはかけ離れている。

 かつて郵政資金は旧大蔵省に預託され、まがりなりにも財政法で融資先の国会報告が義務づけられていたが、今回の法案では「経営の自由度を高める」として、政府への届け出で済むようになる。

 来年十月に発足させる郵政の親会社には政府が三分の一超を出資する。国が大株主でありながら、リスクの高い巨額の海外向け投融資を国会のチェックもなしに郵政グループに押しつけるのは安易すぎないか。亀井氏の「昔の非効率な官業には戻らない」という保証もない。

 しかも郵便局再配置など、痛み覚悟の収益改善こそが求められているときに法案は効率化に触れていない。今夏の参院選を意識し、国民新党や民主党の選挙基盤でもある全特に配慮したのだろうか。

 損失を被れば国民負担に直結しかねない財投復活も含め、国会での徹底した論戦を求める。

 

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