HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Fri, 30 Apr 2010 23:14:28 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:日銀リポート デフレ脱却はまだ先だ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

日銀リポート デフレ脱却はまだ先だ

2010年5月1日

 日銀は二〇一一年度の消費者物価上昇率がプラスに転じるという見通しを発表した。明るい兆しには違いないが、油断はできない。安定的なプラス基調に戻るまで粘り強く金融緩和を続けるべきだ。

 日銀が半年に一度まとめる「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」はその都度、金融政策を決める権限をもつ「政策委員たちの予想」という形で近い将来の物価見通しを公表している。

 物価安定が本来の仕事である日銀にとって、金融政策判断の前提になる、もっとも重要な見通しでもある。

 消費者物価上昇率(生鮮食品を除く)の予想中央値をこれまでの前年度比マイナス0・2%から今回は0・1%に上方修正した。プラスに転じるのは三年ぶりだ。

 一〇年度の実質国内総生産(GDP)の見通しもプラス1・8%に上方修正し、一一年度については同2・0%と見込んだ。

 日銀は現状で資本と労働を過不足なく稼働した場合に実現できそうな潜在成長率を0%台半ばとみている。したがって、一〇年度は潜在成長率を上回る成長を実現し、一一年度はさらに加速するというシナリオになる。

 だが物価も成長見通しも、いささか手前みそにすぎないか。潜在成長率を低めに見積もったうえで、現実の経済を楽観視したきらいがある。そうすれば景気は過熱気味の形になるから、物価上昇という予想が出てくるのは当然だ。

 もしも潜在成長率をもっと高く見込むなら、現状では設備も労働市場も余裕があるので物価や賃金はそれほど上がらないはずだ。

 潜在成長率をどうみるかは、基本になる統計数字の扱い方ひとつで大きく変わる。日銀の現状判断が間違いとまでは言わないまでも、過去の実績をみれば、日銀の楽観論はあまりあてにできない。ここは企業も家計も慎重に受け止めたほうが無難といえる。

 鍵を握るのは、やはり政府と日銀の政策対応である。展望リポートは「経済全体でみた生産性向上など中長期的課題への対応が進まない場合には、国内需要の成長に対する見方が下振れる可能性もある」と記している。

 ここは、まさに正しい指摘である。鳩山由紀夫政権は成長の源泉である民間部門を活性化し、無駄と非効率が残った政府部門のリストラに取り組んでいるか。郵政民営化の巻き戻しなど逆行としか思えない。それではだめだ。

 物価もけっして楽観できない。

 

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