HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 62135 Content-Type: text/html ETag: "bdd7a-15ac-57556480" Expires: Wed, 28 Apr 2010 20:21:38 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Wed, 28 Apr 2010 20:21:38 GMT Connection: close 諫早「長期開門」 解決すべき課題は少なくない : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



現在位置は
です

本文です

諫早「長期開門」 解決すべき課題は少なくない(4月29日付・読売社説)

 農林水産省と与党の検討委員会が、長崎県の諫早湾を閉め切る堤防の水門を長期間開放し、有明海の漁業被害との因果関係を調査すべきだ、との報告をまとめた。

 開門の時期や期間などは今後の検討に委ねるとしたものの、赤松農相は近く、長期開門に踏み切る意向を表明する見通しだ。

 地元では長く対立が続いてきた問題である。開門するとしても、近隣海域の漁業や干拓地における農業への影響、新たな環境被害が発生する可能性などを慎重に見極めることが前提となろう。

 諫早湾干拓事業は、有明海の一部を堤防で仕切り、農地造成や洪水防止などを目的に実施された。2500億円を投じ、1989年着工、2007年に完成した。

 現在は670ヘクタールの広大な用地で、約40の農家・法人が入植して野菜などを作っている。

 干拓事業で問題となっているのは、堤防によって有明海の潮の流れが変わり、ノリや貝類などが被害を受けたとされることだ。このため、福岡、熊本、佐賀3県の漁業関係者らが開門による調査を強く要求していた。

 一方、干拓地での農業生産に悪影響を及ぼすことを恐れる農家や、高潮などに対する防災機能の低下を訴える長崎県などは、開門に反対の立場だ。

 地元の十分な理解を得ないまま農相が見切り発車すれば、混乱は避けられまい。

 農水省は02年に1か月程度の開門調査を実施したが、長期開門は例がない。検討委にも反対意見があったように、事前に解決しておくべき課題は多い。

 水門を全開すれば、満潮時には、農業用水をためる堤防内の調整池の水位が大幅に上昇する。その時に豪雨になれば、排水できずに洪水につながる恐れがある。

 また、調整池に海水が流れ込み、干拓地内の塩害が懸念される。調整池が農業用に使えなくなれば、新たな水源を確保しなければならない、といった点だ。

 開門方針は、検討委が設置されてから2か月程度で決まった。参院選を前に、「有明海再生」という環境重視の姿勢を打ち出したい鳩山政権の政治的な思惑も取りざたされている。

 農水省は昨年度から、諫早湾干拓が周辺地域の環境に及ぼす影響評価を実施中だ。

 来年度にまとまる最終評価の分析を踏まえ、議論を尽くしてからでも、開門の決断は遅くないのではないか。

2010年4月29日01時16分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
現在位置は
です