小中学生の皆さん。今日はとくに皆さんに読んでほしいと思って、この社説を書いています。教育にもっと新聞をとり入れ、授業に使う機会が増えそうだからです。さあ、一緒に考えてみましょう。
東京都北区王子第三小学校では週一回、全校児童が新聞記事を切り抜いています。記事集めのテーマはさまざまです。
四年生の飯郷智輝君(9つ)は建設中の東京スカイツリーに夢中です。ある日、工事の進行を追う連載記事を読んでいて気付きました。順調に高くなってきたツリーの高さが止まったのです。理由をいろいろ想像してみました。担当した西野厚先生(32)は「疑問を見つけたことで学習に積極的になった。新聞を通じて子どもたちの社会への関心が高まっている」と言います。
学校での新聞活用はじつは昔からあり、まだ印刷物の少ない十七世紀にはドイツの大学は新聞を講義に使ったそうです。小中学校での利用は一九三〇年代、アメリカ合衆国で始まりました。不況から復興へと向かっている時でした。ニューヨークで社会の先生たちが、最新の話題が載っている新聞を授業で使いたいと新聞社に頼んだのでした。今では「NIE(エヌアイイー)(ニュースペーパー・イン・エデュケーション=教育に新聞を)」と呼んで、世界六十カ国以上で採用されています。
学校で最低限何を教えるかを決めた「学習指導要領」の最新版は、国語の授業で、今以上に新聞を活用するよう述べています。
なぜ新聞なのでしょう。文部科学省は、読む、書く、話す、聞くといった言葉の力を付けるのに役立つと言います。これは具体的に言うとこうだと思うのです。新聞は教科書と違い、子どもには読ませたくないような残酷な事件も、政治や外交でまだ進行中であり事実として確定していないことも載っています。それらを読んで、自分なりに考えたり、友達と話したりすることで、いろいろな力が知らないうちにつくんじゃないか。
そう言うと「勉強のために新聞を読むのか」と、いやになるかもしれませんが、そうじゃなく、新聞には社会や暮らしにかかわるいろんな話題が載っていますから、まず興味のあることから読んでください。今、社会で何が起きているのか。大人たちは一体何を考えているのか。私たちはどう考えよう。難しがらずに、まず読んでみませんか。
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