鳩山由紀夫首相の政治資金問題をめぐる捜査は終結する。検察審査会が「不起訴相当」と判断したからだ。だが、監督責任を処罰できぬもどかしさがうかがえる。速やかな法改正を求める。
政治資金の収支報告書への虚偽記入に鳩山首相は関与していない。積極的に加担しなければならない動機も見いだし難い。検察の「不起訴」の判断を覆す証拠がない−。検察審査会のこのような結論により、首相の刑事責任追及には至らなかった。
だが、十一人の市民の目は、決して甘かったというわけではないだろう。まず、母親からの総額十二億円を超える巨額な資金提供についてだ。毎月千五百万円ずつ入金されてから、首相個人が政治団体に拠出するカネが少なくなった事実を指摘した。そして、次のように述べた。
「母からの莫大(ばくだい)な資金が使われていることも全く知らなかったというが、素朴な国民感情として、このようなことは考え難い」
あくまで「付言」としての指摘ではあるが、「知らない」を押し通す首相に突きつけた、不信の言葉といえる。
さらに検察が本人の取り調べをせず、「上申書」の提出だけで済ませたことも問題視した。確かに上申書は「一方的な言い分」にすぎないものであり、「内容そのものに疑問を投げかける声が少なからずあった」という審査会の声は、検察の捜査の在り方に対しても、批判を加えた形だ。
何より“ザル法”の改正を強く求めた点を重視したい。規正法は代表者に対し、会計責任者の「選任および監督」を怠ると罰せられる規定を持つ。しかし、選任と監督の両方の要件を満たさないと責任は問えない。これでは、選任に問題がなければ、監督不十分がいくらでもまかり通ることになる。
「政治家に都合のよい規定」という指摘はもっともだ。「監督責任だけで会社の上司が責任を取らされている世間一般の常識に合致しない」という市民感覚を鳩山首相は身に染みて感じてほしい。法の抜け穴を封じるべく、政治は早急に動きだすべきだ。
また、事件が終われば、検察側に出した関係資料を公開すると表明していた首相が、一転、拒む姿勢に変わった。
政治不信をぬぐうのであれば、国会に資料を提出し、真相を明らかにするのが筋だ。巨額な「鳩山マネー」の使途は何か。今度は首相が答える番だ。
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