多分、交渉ごとで最も重要なのは、正しい交渉相手と交渉する、ということだ。米軍普天間飛行場移設問題で、鳩山首相はそこを誤った気がする▼首相は先の衆院選で、日米合意を見直すにつき、新たな移設先は「国外、少なくとも県外」と言った。そもそもこの後段、「少なくとも県外」が余分だったかもしれない▼妙な合意修正案を含め、沖縄はもちろん、「県内」にノーだ。首相の「腹案」とも目された「県外」候補、鹿児島県・徳之島も明確にノー。各地の人々の怒りは、政権に向かっている▼すっかり“国内問題”になってしまったが、政府にとって、この問題の本来の交渉相手は米国のはずだ。しかも、三月の世論調査によれば、移設先として最多の回答を集めたのは「国外」なのである▼米国は猛反発しようが、あの後段がなく端(はな)から「国外」に的を絞っていれば、政府は少なくとも本来の「日本対米国」の構図で、世論の後押しも受けた交渉ができたろう。まだ遅くない、かどうか微妙だが、妙案がない以上、今からでも「国外」で腹をくくってはどうか▼かりそめにも国民が決断した歴史的政権交代で最初に誕生した首相だ。“国内問題”に終始し、肝心の米国には、国民の本音ひとつ言えぬまま詰め腹を切らされることになってはいかにも惨めではないか。鳩山さんが、ではない。われわれ国民が、である。