HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 60926 Content-Type: text/html ETag: "f4917-11a3-fd96700" Expires: Tue, 27 Apr 2010 02:21:14 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Tue, 27 Apr 2010 02:21:14 GMT Connection: close 4月27日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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4月27日付 編集手帳

 〈母は/舟の一族だろうか/こころもち傾いているのは/どんな荷物を/積みすぎているせいか〉――詩人の吉野弘さんは『漢字喜遊曲』でうたった。舟を女性名詞に分類している外国語は少なくないが、漢字の場合は「母」と姿かたちがよく似ている◆―嵐も吹けば雨も降る/女の道よ なぜ険し…かつての流行歌『ここに幸あり』(詞・高橋掬太郎(きくたろう)、曲・飯田三郎)の一節はその“女性”にもあてはまる◆横浜港のシンボル「氷川丸」が80歳を迎えた。戦前は豪華客船、戦時中は負傷兵を運ぶ病院船、戦後は引き揚げ船と、傾くほどに重い「歳月」という名の荷物を背負った女性であり、母であろう◆横浜―シアトル航路の貨客船に復帰して引退し、いまは山下公園に係留されて市民や観光客に親しまれている。子供のころに遠足などで立ち寄り、しゃれた船室のたたずまいに触れ、あるいは機関室そばの油のにおいをかいで、はるか洋上に空想の船旅をした人も多いはずである◆もうすぐ5月の連休、傘寿を迎えたその人を訪ねてみるのもいい。嵐に吹かれ、雨にも降られた遠い昔語りを聞かせてくれるだろう。

2010年4月27日01時13分  読売新聞)
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