日本航空(JAL)の更生計画づくりが難航している。路線廃止や従業員削減などリストラ推進をめぐり関係者間の合意が遅れているためだ。再建は時間との競争だ。早期策定に全力を尽くせ。
今月中旬、約一週間にわたってほぼ欧州全域が飛行停止となったアイスランドの火山噴火。世界不況から立ち直りかけた旅客需要に冷や水を浴びせた。天災に弱いのは鉄道や自動車など公共交通機関に共通する点だ。
日航の破綻(はたん)は明らかに人災である。長年続いた採算軽視の路線開設や事業拡大、膨れ上がった組織温存など民間航空会社として責任ある経営が行われなかった。今年一月、法的整理に追い込まれたのは当然の帰結だった。
政府はただちに総額一兆円規模の公的資金投入を柱とする支援策を決めた。同社と管財人となった企業再生支援機構は六月末までに更生計画を提出する予定だ。
その計画づくりが遅れる見通しという。なによりも当初のリストラ案が甘すぎる−と銀行団などが反発しているためだ。
更生法適用時の合理化案は三年間で国内外三十一路線を廃止しグループ全体の約三分の一にあたる約一万五千七百人を削減。「ジャンボ」はじめ大型機五十三機の早期退役などとなっていた。
銀行団側の厳しい要求を受けて同社はパイロットから事務職まで全職種を対象に二千七百人の早期退職を募集するなど、人員削減の前倒しに踏み切った。
また路線削減も搭乗率などを基準に国内外で五十路線程度まで拡大する方向だ。伝統ある欧米路線からの撤退も必至で、国内では名古屋(小牧)空港からの全面的撤退も検討中という。
国民が不満なのは、再建の進行状況と公的資金の使途の情報が伝わってこないことだ。
日航の最近の極端な運賃引き下げはダンピング(不当廉売)ではないか−との声がある。公的資金を使っての値引きは許されない行為で、欧州連合(EU)のようにガイドラインを制定して厳しく規制すべきだとする。国土交通省も通達を出して注意した。
更生計画は再建のための工程表だ。策定の遅れは再建の遅れにつながりかねない。世界の航空業界は三大アライアンス(航空連合)の下、企業連携が進む一方、格安航空会社(LCC)の台頭で競争はますます激しくなっている。
日航と支援機構は更生計画の策定に全力を挙げてもらいたい。
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