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チェコの作家カレル・チャペックは「ロボット」という造語を生み出した人物として知られる。一徹な機械好きかと思いきや、庭いじりをこよなく愛したそうだ。『園芸家12カ月』という愉快な本も書いていて、思わず膝(ひざ)を打つ記述に満ちている▼たとえば、「ほんとうの園芸家は花をつくるのではなくって、土をつくっているのだということを発見した」(小松太郎訳)。我が意を得たりの方もおられよう。種をまく前にしっかり土を作るのは、いずこを問わず花作りの基本に違いない▼野菜作りも同じである。借りて耕している畑を、今年も鍬(くわ)で起こし、石灰をまいて堆肥(たいひ)を鋤(す)き込んだ。通気性と水はけが良く、かつ保水性に富む、矛盾するような条件を満たすのが良い土だとされている▼ふかふかの土を割って芽が出る様は、いつも感動的だ。だが、今季は素人菜園にも心配が多い。先日は雪の予報を聞いてジャガイモの新芽に土をかぶせた。幸い耐えてくれたが、農家の苦労がしのばれる乱調の春である▼記録的な天候不順は、増えつつある「野菜工場」への追い風になるそうだ。温度や光、栄養分もコンピューター制御して栽培する施設で、農水省も後押しをする。人工光の室内で青物が育つ様は、チャペックも驚くSF世界を思わせる▼「どんなに悪たれ口をきこうと、天候だけはだめだ。時がみちて法則にかなえば、蕾(つぼみ)はひらき、芽はのびる」と作家は忍耐を説いた。天の乱心に揺るがぬ技術は頼もしい。一抹の味気なさを思うのは、「素人農民」の甘い感傷だろうか。