HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 21697 Content-Type: text/html ETag: "48b60f-54c1-e784fac0" Cache-Control: max-age=5 Expires: Mon, 26 Apr 2010 00:21:07 GMT Date: Mon, 26 Apr 2010 00:21:02 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):社説
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沖縄県民大会―基地を全国の問題として

 遠い沖縄での出来事であり、身近なことではない。そのようにしてやり過ごすわけにはいかない。

 米海兵隊普天間飛行場の「県外・国外」への移設を求める沖縄県民大会が、9万人の参加(主催者発表)のもとで開かれた。

 「全国の皆さん、沖縄の基地問題は沖縄だけの問題ではありません」

 大会で沖縄県の仲井真弘多知事は、そう訴えた。日本の安全保障、つまり私たち国民一人ひとりの安全が沖縄の米軍基地の存在と、そしてそれを受け入れてきた沖縄県民の負担と、じかにつながっているのだという叫びである。このことを私たちは大会を機に改めて深くかみ締めなければならない。

 日本の安保政策の重要な柱である日米同盟の受益者は、日本国民すべてである。同盟を支える米軍基地は三沢、横須賀、岩国、佐世保など各地に散在するが、75%は沖縄に集中している。

 核実験をした北朝鮮や台湾問題をにらむなら、普天間の県内移設が軍事的に合理的だというのが米国の論理だ。

 しかし、基地の沖縄集中がもたらす事故の危険や騒音は並大抵ではない。度を越している。県民が「不公平、差別に近い印象」(仲井真氏)を持つのも当然である。

 全国民が受益し、沖縄県だけが負担する。まぎれもない落差への憤りが、沖縄の人々を大会へと突き動かした。

 「決着」の期限が5月末に迫る中、普天間移設問題に取り組む鳩山政権は確たる政府案を示すこともないまま、いまだに迷走を続けている。

 もとより、沖縄県の負担を減らし、できるだけ国民全体で分かち合おう、「県外移設」を模索しようとの提起は間違っていない。

 しかし、問題の難しさに比して鳩山由紀夫首相の運び方はあまりに拙劣である。「腹案」があると言ってみたものの、中身があるのかないのかわからない。鹿児島県徳之島との協議の道を探ったものの、地元の町長から「門前払い」を食わされる。この7カ月余、米政府との協議もまるでちぐはぐだ。

 相手のある交渉事をすべてガラス張りにすることはできない相談だろう。しかし、首相は迫る期限に追い立てられ、苦し紛れの対応を繰り返しているようにしか見えない。

 もはや時間は限られている。「県外」への道が開けなければ、当面は沖縄に負担を担ってもらわざるをえなくなってしまう。

 首相は今、全国民に一度きちんと説明すべきである。県外移設にどう取り組んできたのか。安全保障上の要請と基地周辺の住民への配慮との接点を、米国とどう話し合ってきたのか。今後の沖縄負担をどう考えていくのか。

 でないと負担を国民全体で分かち合おうとの提起さえも色あせてしまう。

貸金業法―金融の安全網作りを急げ

 自殺や家庭崩壊など社会悲劇の温床となった多重債務問題。その解決のためには、借り手を生活破綻(はたん)から救う「金融の安全網」を整備していくことが必要だ。

 その柱となるのが、抜本改正された貸金業法だ。6月に完全施行されるのを機に、さまざまな施策と組み合わせて成果が上がるようにしたい。

 この完全施行で、上限金利は年29.2%から20%に下がり、年収の3分の1を超す融資は禁じられる。多重債務の発生を阻止するのに役立つ。

 2006年暮れの法改正後、強引な取り立てや無登録営業などへの規制・罰則が段階的に強化されてきた。多重債務者はこの間に着実に減り、効果は表れている。

 その一方で、貸金業者の赤字・廃業が続出している。完全施行されれば審査の厳格化で借りられない人が増え、ヤミ金融の横行を招くのではないかとの指摘も業界にはある。

 多重債務者が急にまとまった返済を強要されたり、健全な借り手が資金繰りに困ったりするようでは問題だ。そうした混乱を避ける十全な配慮が求められる。ヤミ金融の摘発にも一段と力を入れて欲しい。

 同時に大事なのは、多重債務問題を生んできた日本の金融のゆがみを正すことではあるまいか。

 担保を持つ「金融強者」には銀行などが低金利で融資する一方、担保のない「金融弱者」は高金利の消費者金融や商工ローンに依存するしかない。この二極構造を正すことだ。

 政府は約3年前に多重債務者対策本部を設けて「顔の見えるセーフティーネット貸し付け」を広める方針を掲げた。しかし、実際の動きは鈍い。

 有力な取り組みのひとつが、岩手県で実績がある信用生協の拡大だった。しかし参入規制が厳しく、新規の設立はない。一般の生協では、西日本で事業を展開するグリーンコープ連合が福岡など5県で生活再生のための相談や融資、金銭教育といった多角的な活動をしている。だが、他の生協にはなかなか広がらない。

 鍵を握っているのが、一般の金融機関の動きだ。宮城県栗原市は仙台弁護士会、地元の仙北信組、一関信金と提携して年7.9%で最大1千万円の生活再建資金を融資する「のぞみローン」を展開している。市が両金融機関に計1億円を預託し、その運用益を充てて金利を抑えた。

 借り手に対する生活再建の助言を金融機関が担う。「地域を活性化しなければ生き残れない」と、協力に踏み切ったのだ。隣接する登米市も同様のローンを始めた。

 行政の働きかけをてこに金融機関の発想を変えることは、日本全国津々浦々でできるのではないだろうか。

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