HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 25 Apr 2010 01:14:38 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:ジョン・レノン、オノ・ヨーコ夫妻が、浮世絵などを扱う東京の…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2010年4月25日

 ジョン・レノン、オノ・ヨーコ夫妻が、浮世絵などを扱う東京の古美術商に足を運んだのは四十年ほど前のことだ。白隠の達磨(だるま)絵や芭蕉の俳句を書いた短冊などが気に入り、数点を購入した▼別の店に案内する空き時間に、店主の故木村東介さんは二人を東銀座の歌舞伎座に連れて行った。独特の華やかな舞台を見せたいと思ったからだ▼ちょうど公演中だったのは「隅田川」。六代目の中村歌右衛門が、子供の死を知って泣き崩れる母親の悲しみを演じていた。明るい歌舞伎を見せたかった木村さんは、外に出ましょうかと促そうとして驚いた。レノンさんがとめどなく涙を流し、ヨーコさんがハンカチでぬぐっていたのだ▼清元の唄(うた)もせりふの意味も理解できなかったはずだ。それでも木村さんは「何もかも読みとれたのだ。それは歌右衛門の演技力だ。…名優の演技自(おの)ずから名演奏家に通ず」と振り返っている(話の特集『ジョン・レノンと歌右衛門』)▼数々の名舞台を生んだ歌舞伎座が今月末に閉場する。「さよなら公演」は大盛況で、二時間並んでやっと一幕見席で観劇できた。寒い中、外国人の観光客もたくさん並んでいた▼芸の力は言葉の壁を乗り越える。高層ビルとともに「五代目」の歌舞伎座が完成するのは三年後。音響面などに課題もあると聞くが、円熟した芸を伝える新たな「祝祭空間」に期待する。

 

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