名古屋市の河村たかし市長が、市民税減税の恒久化や議員報酬の半減など、市議会の拒否した改革を再提案した。改革の方向自体は時代の要請である。討議で成果を出すのが民主主義ではないか。
「自分らの給料を一円も下げずに、よう言っとれますね(よく言えますね)」
市の税収減などを理由に、市民税の10%減税を本年度限りとしながら、自らの報酬半減には応じない議会を、河村市長が皮肉ると、議場は議員のやじで騒然となった。傍聴席の市民はどんな思いで見ていたことだろう。
二月議会で、議会側は主要会派が河村改革に次々とノーを突き付けた。このうち、本年度限りとなった市民税減税の継続と、議員報酬の半減などに絞り再審議を求めたのが、この臨時議会である。
しかし、双方とも市民のために成果を出そうという気持ちがどれほどあるのか。「臨時議会の必要性も大義もない」と言う議員もいる。議会は会期を三日間としただけで、再び否決の見通しだ。
けんか腰の河村市長も同じに見える。仮に騒ぎを大きくして関心を集め、三十六万五千人の署名を必要とする議会解散請求、リコールに向けた戦術と見られるなら、それは逆効果ともなるだろう。
本紙が週末行った電話世論調査の結果を見れば、市民の期待との差異がよく分かる。
まもなく就任一年を迎える河村市長の支持率は61%と依然高い。その理由も「政策がよいから」が43%で最も多い。
しかし、具体的に尋ねると、市長が恒久化を求める市民税減税は「一年やってみて、継続するか判断すればよい」が57%にのぼる。議員報酬も「半減」の29%に対し「半分は極端だが、ある程度は減らすべきだ」が63%だった。
河村改革の方向はいいが、着地点は市長と議会の主張の中間という民意が浮かび上がる。市長と議会の対立を「両者とも歩み寄ろうという努力が足りない」とみている市民が52%いる。「緊張関係があってよい」との評価も16%ある。
これだけ河村改革が全国の注目を集めるのは、国民の多くがわがまちの政治と議会に不満と危機感を抱き始め、良い方へ変わってほしいと切望しているからだ。
地域主権、地方分権だという。議論を重ね、どう改革を進めていくか。全国が名古屋を見ている。
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