HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 20 Apr 2010 21:15:57 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:普天間問題 命懸けの姿が見えない:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

普天間問題 命懸けの姿が見えない

2010年4月20日

 米軍普天間飛行場の移設先に挙がる鹿児島県・徳之島で大規模な反対集会が開かれた。五月末までの決着は困難視され始めたが、期限を自ら区切った鳩山首相に、命懸けで取り組む姿勢は見えない。

 普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に駐留する米軍ヘリコプター部隊の移転先に挙がる徳之島。島内三町などが主催した十八日の反対集会には一万五千人が参加した。約二万六千人の島民の六割が受け入れ拒否を突き付けた形だ。

 在日米軍基地の約75%が集中する沖縄県民は騒音、事故、犯罪などの基地被害に日常的に苦しむ。

 その基地を喜んで引き受ける沖縄県外の自治体はないだろう。日米安全保障体制の重要性は理解しつつも、自分の住む地域には来てほしくないというのが本音だ。

 だからこそ、米軍基地の移設には、地元住民の大方の同意を得ることがまず必要不可欠なのだ。

 鳩山由紀夫首相が言明した「腹案」は明らかでないが、徳之島への移設を想定しているのなら、首相がまず島民代表らと膝(ひざ)つき合わせ、話し合うべきでなかったか。

 一九九六年、米政府から普天間返還合意を取り付けた橋本龍太郎首相は在任中、モンデール駐日米大使や大田昌秀沖縄県知事と談判し、大田知事との会談は二十回近くに及んだという。

 鳩山首相は就任後、いまだに沖縄県や徳之島を訪れておらず、仲井真弘多沖縄県知事との会談は一度だけだ。普天間問題への熱意を疑われても仕方がない。

 「沖縄県民の負担軽減」「最低でも県外」という首相の方針や、「緊密で対等な日米同盟関係」を目指す民主党政権の方向性は買うが、その設計図、移設先や米国との合意に至る具体的なシナリオがなければ画餅(がべい)に帰す。

 「五月末までの決着」を断言したのは首相自身であり、その意気込みを見届けたい国民も多かったろう。「命懸けで行動する」とまで言い切ったのなら、なおさらだ。

 しかし、言葉に行動が伴っているとは言えない。

 首相は徳之島島民の反対に対し「正式に申し上げていない中、不安ばかり募らせ、おわびを申し上げなければならない」と語ったが、首相の態度が不安をかき立てているという自覚を欠いている。

 首相が自らの発言の重みを理解していないとしたら、宰相の資質に疑問符が付く。「言うは易(やす)く行うは難し」との箴言(しんげん)を引かざるを得ないのは、何とも情けない。

 

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