HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 61612 Content-Type: text/html ETag: "be01d-15c4-185b5c40" Expires: Sun, 18 Apr 2010 21:21:37 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sun, 18 Apr 2010 21:21:37 GMT Connection: close 海外美術品展示 国家補償制度は検討に値する : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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海外美術品展示 国家補償制度は検討に値する(4月19日付・読売社説)

 週末ともなれば、各地の美術館は、その規模の大小を問わず入場者でにぎわいを見せる。大型連休には、美術館巡りを楽しみにしている人も多いことだろう。

 日頃接することの出来ない海外の名作を集めた企画展にも人気が集まる。昨年、国立西洋美術館などで開かれたルーヴル美術館展の入場者は147万人を数えた。

 優れた海外の作品が広く国民に紹介されることで、豊かな文化環境も育まれるに違いない。

 しかし、作品を所蔵する外国の美術館に対してねばり強く交渉を重ね、貸し出しの同意をとりつけるのは大変な作業だ。

 日本の美術館には、交換条件として貸し出せるような、相手国にとって魅力のある作品は少ない。欧米から地理的に遠いことも弱点となっている。

 運営資金や職員数で欧米に劣る日本の美術館が、単独で海外の作品を一堂に集めて紹介する美術展を開くのは、簡単ではない。公共性があり、交渉ルートも持っている新聞社やテレビ局との共催事業として行われる例が多い。

 こうした共催事業は、実績と信用を積み重ねてきた。

 しかし、事故や盗難にあった場合の国家補償を約束するのであれば、国宝級の作品などを借りる交渉の上でも大きな支えとなる。

 高額な保険金が作品を借りる上での障害にもなっていたが、その問題も解消される。

 国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)が1978年に採択した文化財保護のための勧告の中で、美術品の国家補償制度の重要性に言及したのも、こうした意義を踏まえてのことだろう。

 文化庁も、この国家補償制度の導入を検討している。

 主要8か国(G8)の中で、国家補償制度を導入していないのは日本とロシアだけだ。

 例えば米国では、75年に制度を導入して以来、年間約40件の展覧会を国家補償の対象として認定してきた。最近までに補償された事例は2件で、合わせて約1000万円相当が支払われたという。

 無論、作品を借り入れるに当たって、美術展の主催者が一義的にリスクを負担するのは、当然だろう。国家補償の対象となる事業は厳選されなければならない。補償限度額も設けるべきだ。

 貸出先に安心を与える国家補償制度の導入は、国民が海外の質の高い美術作品に触れる機会を増やすことになるだろう。それは新しい文化振興策にもなる。

2010年4月19日01時11分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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