日本経団連が鳩山政権に「成長戦略2010」を提案した。企業の国際競争力強化を通じた雇用創出や消費税率引き上げなど多岐にわたる。縮む日本経済の再生には政と経との連携が欠かせない。
「今までは企業など供給側の発想が中心だったが、これからは個人など需要側にも目を向ける」。鳩山由紀夫首相は政府が六月にまとめる新成長戦略について、こう語った。
いくら「生活第一」を掲げての政権交代といっても、経団連は企業への配慮が足りないと不満を抱いているようだ。
企業の生み出す付加価値は国内総生産の半分に上り、全労働人口の七割が企業で働いている。企業軽視の成長などあり得ないはずだ−。経団連として、そこは譲れぬ一線だったのだろう。
需要側にこだわる首相に「需要と供給の一体化」を逆提案し、成長には雇用に裏打ちされた所得と、それを支える企業の国際競争力が備わっていることが不可欠と、はっきり異を唱えた。
本年度予算は金融危機の影響で税収が激減し四十四兆円もの国債発行を強いられた。子ども手当など需要側からの成長は財源が乏しくては行き詰まる。菅直人副総理兼財務相らが消費税増税を唱え始めた背景にも財政の窮迫がある。
首相は経団連からの提案もくみ取り、経済同友会などの経済人とも意見交換して成長戦略を描くべきではないか。
中長期を見通して企業を元気づけ、雇用、賃金を増やして税収増を図る。政府と企業が連携し、電機部門などで国際的に飛躍する韓国の事例も参考になるだろう。
ただ経団連の提言には法人税率引き下げや、首相が任期中は増税しないと明言した消費税の増税も含まれている。経団連は自民党政権時代、雇用の規制緩和を進め、製造業への労働者派遣を実現して大量の非正規社員を生み出した。
利益第一主義で国民の理解を得られるのか。日本の法人税率は中国などに比べ格段に高く、企業の海外進出を加速させていることは否定できない。消費税論議も社会保障制度を維持するうえで重い課題ではあるが、企業への信頼なくして国民の説得は難しい。そこは鳩山政権とて同じだ。
日本を再び成長させるには税制の見直しをはじめ、規制緩和や新産業の創出など包括的な対策が求められる。政府にも経団連にも国民の信頼がなければ生活第一の骨太の戦略には仕上がらない。
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