車種別に上限料金を導入するなど、高速道路の新料金制度が発表された。一部無料化に対応するものだが、無料化や従来の割引財源の道路建設への転用も含め、場当たり主義の感をぬぐえない。
首都高速、阪神高速、本州四国連絡道を除く高速道路の新料金体系は、軽自動車千円、普通車二千円、大型車五千円など車種別に上限料金を設け、従来の割引制度は原則撤廃、六月から実施する。
前政権から、ETC搭載車の休日料金上限を千円とするなどの割引が実施中だ。新料金は、六月から高速全体の18%で始める無料化とセットで、全車両対象という点を除けば、従来の制度の変形とみることもできる。
新料金体系では、平日の遠距離走行が割安の半面、近距離利用の車は実質値上げとなる。新料金体系や一部無料化で、他にどのような問題が予想されるか。
車の通行量がさらに増えるかは路線・区間で違い、渋滞の発生や排ガスの変動は即断できない。しかし他の公共交通への影響が強まるのは避けられまい。
JR七社は、休日割引の減収が上限料金導入などで二倍に膨らむと見込み、先に上限料金制度の見送りを求めた。フェリー業界では、伊勢湾フェリーが九月末で三重県鳥羽市−愛知県・伊良湖航路を廃止、会社も清算する。
高速道路無料化という民主党の政権公約は降ろさず、一方で新しい料金体系を導入する。二〇一〇年度予算で公共事業費を削減、無駄な道路建設は抑制としつつ、以前からの料金割引原資三兆円のうち一・四兆円を、高速道路整備に転用可能の法改正を進める。これは約束違反ではないか。
割引原資の転用で、東京外郭環状道路や名古屋環状2号の新規着工、東海北陸道一部区間の四車線化などが整備対象に挙がっている。転用が一部料金実質値上げの理由との批判もある。
新料金体系で、上限料金をETCに関係なく全車両に適用する点は、不公平の是正として評価できる。だが政権交代後の高速道路に関する施策全体を見ると、矛盾したつぎはぎが目立つ。
国民は右往左往するばかりだ。高速道路網は新規に建設するかしないか。建設するなら資金の負担をどうするのか。維持管理の費用も含め、受益者負担の原則は今後も貫くのか。あらためて国民を納得させる首尾一貫した総合的な方針をまず打ち出し、それに基づく具体策を築くべきではないか。
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