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天声人語

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2010年4月15日(木)付

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 「ウインド・イン・マーチ」「レイン・イン・エイプリル」と言うそうだ。「風の三月、雨降る四月」である。春の空が定まりにくいのは洋の東西を問わない。北半球の中緯度帯には共通の現象なのだという▼暖気と寒気がぶつかり合って、風を呼び雨を誘う。「四月よ、四月はいったい自分でどうしたらよいのか分からないでいるのだ」。こんな意味の童謡がドイツにあると、お天気博士の倉嶋厚さんの著書に教わった。とりわけ今年の4月の「とまどい」は、思春期の少年少女を思わせる▼行きつ戻りつ、大人の扉ならぬ「季節の扉」をなかなか開けられない。細めに開けては逡巡(しゅんじゅん)し、後ずさりして過ぎた季節の中へ逃げ込む。少し小心なのかもしれない。とはいえ誰も、ためらう背中を押してやることはできない▼昨日は北の地方に風雪をもたらした。日照時間も各地で短く、春野菜の産地を泣かせる。東京ではキャベツやネギが去年の倍近い。さらにトマトやキュウリ、ナス、ピーマン。レタスにホウレンソウも高値というから、主役級は軒並みだ▼東京ガスによれば、この4月のガス使用量は、平年の使用量に基づいた計画値より3.5%多いそうだ。気温や水温が低いためらしい。〈雨冷を解いてくれたる春暖炉〉永森とみ子。かなりの低温が、土曜日ごろまで続きそうだという▼冒頭の言葉に戻れば、英国では「三月の風と四月の雨が美しい五月をつくる」とも言うそうだ。季節の扉を開くために、野山をうるおし木々の芽立ちを促す、やわらかい雨がそろそろ欲しい。

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