平沼赳夫元経済産業相、与謝野馨元財務相らが新党「たちあがれ日本」を結党した。鳩山民主党政権下での閉塞(へいそく)感打破が狙いだが、政党政治の成熟には、民主、自民両党を鍛え直すことが先決だ。
「高揚感がない」「心が躍らない」。「たちあがれ日本」に対する論評は、新党にしては散々だ。
参加した五人の国会議員の平均年齢は約七十歳。そのシニアぶりは参加者自身が自覚しているようだが、高揚感の欠如は年齢ではなく、新党の持つ意味のあいまいさに向けられているのではないか。
結党趣旨に「打倒民主党」を掲げたものの、自主憲法制定や税制抜本改革などの主張は、平沼、与謝野両氏の持論をつなぎ合わせた印象がぬぐえない。
政党助成金を得るために五人を集めたのなら、有権者は政策実現よりも数合わせと感じるだろう。
内からできなかった自民党政治の再生を、外からならできるというのも容易には理解できない。
昨年の衆院選で、自民、民主の二大政党が政策を競い合い、政権交代が実現した新しい状況下では、野党の立場にこらえ切れず、政界再編に活路を見いだそうとする悪循環からは、脱した方がいい。
「たちあがれ日本」に加え、山田宏・東京都杉並区長らも自治体の首長や首長経験者による新党結成を目指している。
新党参入で緊張感が生まれ、政策論争が活発化するのは悪いことではないが、政界再編の明確な展望がない中、新党結成で野党の力が分散すれば、かつての自民党のように一強支配を許すだけだ。
ただ、平沼、与謝野両氏らの問題意識は分からなくもない。
鳩山政権は「政治とカネ」に対する不信を払拭(ふっしょく)できず、低迷する景気や危機的な財政状況を打開する見通しも立てられずにいる。外交では「緊密で対等な日米同盟関係」を掲げたが、普天間飛行場返還問題での迷走ばかりが目立つ。
政権交代の成果は見届けたいが首相の力量への疑問が、内閣支持率を押し下げているのが現実だ。
自民党も、腑甲斐(ふがい)ない民主党を正すという、野党本来の役割を全うできてはいない。
民主、自民両党に必要なのは、自らの使命を思い起こし、その実現へ態勢を立て直すことだ。立ち上がるべきは両党の方である。
「たちあがれ日本」結党に意味を見いだすとすれば、こうした至極当たり前のことを、あらためて気付かせた、という一点である。
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