HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 11 Apr 2010 01:14:27 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:沖縄密約判決 返還の深い闇に光を:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

沖縄密約判決 返還の深い闇に光を

2010年4月10日

 沖縄返還をめぐる密約文書の開示を命じた東京地裁の判決は、歴史の暗部をこじあける大きな一歩だ。政府は速やかに文書の公開とともに、返還交渉にまつわる調査を尽くし、国民に公表すべきだ。

 「国民の知る権利をないがしろにする外務省の対応は不誠実だ」とまで述べた判決は、密約の存在を否定し続けてきた政府を厳しく叱責(しっせき)したものだ。

 沖縄返還協定に基づき、日本政府は特別支出金として総額三億二千万ドルを米国側に支払った。だが、その中には本来、米国が負担すべき軍用地復元補償費などが含まれていた。

 特別支出金以外にも“秘密枠”が存在し、莫大(ばくだい)なカネを日本が積んだ。それらの密約は、米国側の公文書などから判明してきたが、日本国民は重要な情報から疎外されたままだった。

 東京地裁は密約の存在を認定したうえで、外務省や財務省が文書開示を拒んだことを「違法」とした。重要なのは、密約文書を「交渉の難局を打開した経緯、手法を示す外交文書として第一級の歴史的価値を有する」と、重要性を大きく評価した点だ。開示されれば、戦後史が塗り替えられる可能性が濃厚になる。

 三月に公表された外務省の有識者委員会の報告書では、沖縄の財政密約について、軍用地の復元補償費のみ認めただけで、不十分な内容だった。米国の連邦準備銀行に約一億ドルが無利子預金されていたことも判明したが、これも氷山の一角だろう。政府は文書の徹底調査と関係者への聞き取りなどを進め、返還交渉の全貌(ぜんぼう)を迅速に明らかにすべきだ。

 情報公開の上でも、意義は大きい。これまで両省は文書の「不存在」を主張してきたが、判決はその証明を政府側に求めた。さらに「廃棄されたなら、組織的な意思決定がされているはずだ」とも指摘した。重要文書の廃棄は歴史を冒涜(ぼうとく)するもので、許し難い。政府は事実関係や経緯を徹底的に調査し、責任追及してもらいたい。

 沖縄密約は元毎日新聞記者の西山太吉氏が当時、内部資料を入手したが、罪に問われ、問題がすり替えられた。封印されてきた戦後史に対し、判決が「国民の知る権利の実現」を明確に掲げた点は、とりわけ評価したい。

 沖縄は返還後も米国の都合のいいように使われ続けている。密約という「ウラ安保」の検証は、日米同盟のゆがみの根本をもあぶり出すことになるはずだ。

 

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