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天声人語

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2010年4月9日(金)付

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 ベートーベンの交響曲第3番「英雄」と5番「運命」。はざまの4番を「2人の巨人にはさまれたギリシャの乙女」とシューマンはたとえたという。似た印象がポーランドという国にもある▼しかし、ロマンからは遠い。「両側にソ連とドイツという大男が眠っていて、彼らが寝返りを打つと潰(つぶ)されてしまう」と比喩に言う人がいたそうだ。双方から侵攻された第2次大戦は厳しい国難となった。さなかに起きた「カチンの森事件」の追悼式を、昨日の国際面が報じていた▼1940年、ソ連軍の捕虜になったポーランドの将校ら約2万人が銃殺された。ソ連はナチス・ドイツの仕業と主張した。真相は長く伏せられたが、ゴルバチョフ時代の90年になってやっと認めた。今年は事件から70年の節目になる▼ロシアでの式典には、ポーランドの映画監督アンジェイ・ワイダ氏(84)の姿もあったそうだ。事件で父親を失った遺族である。長く温めて完成させた「カティンの森」は日本でも公開されている。歴史を次の世代に渡すのが使命、という気迫が映像に満ちている▼ワイダ氏の思いに、「人間の歴史は虐げられた者の勝利を忍耐強く待っている」というインドの詩人タゴールの言葉が重なり合う。犠牲者も遺族も、ソ連の「残酷と虚偽」に虐げられた。「勝利」とは、史実が世代を超えて記憶され続けることだろう▼映画へのメッセージで、監督は「9月17日」を知らない若者を嘆いていた。ソ連軍がポーランドに侵攻した日である。国は違っても、伝え継ぐ難しさは国境がない。

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