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核超大国の米国とロシアだけではなく、他の保有国も含めた核軍縮への糸口になるのではないか。米ロによる新核軍縮条約署名を、核に依存しない世界づくりへの転換点としたい。
米ロ首脳がプラハで署名した新条約では、配備する戦略核弾頭をそれぞれ1550発以下に減らす。オバマ米大統領は近いうちに、次の核軍縮条約の交渉に入る意向だ。やがて米ロが1千発以下、あるいは数百発に減らすことも検討課題となろう。
ただ現在の核の脅威は、保有国同士の戦争より、拡散や核テロである。防止にはすべての国の結束が必要だ。オバマ大統領はそう強調する。的を射た安全保障観だ。それには、米ロ以外の核保有国も多国間の軍縮構想に加わらなければならない。署名は他の保有国の動きを促す下地を作ったといえる。
北大西洋条約機構(NATO)は今年11月に新戦略概念をまとめるが、ドイツ、ベルギーなど非核の5カ国は戦略を再考し、核廃絶に向けた動きを加速する方針をすでに表明している。
核の数や役割を縮小するオバマ路線に、百数十発の英国、約300発のフランスも同調するべきだ。ロシアとNATOも安全に共生できる地域の枠組みづくりへ、本格的に乗り出してもらいたい。そんな試みが、新たな米ロ交渉と同時に進めば、一方が他方を後押しする相乗効果も生まれるだろう。
問題は中国だ。200発前後の核を持ち、今も軍事費の増大を続ける。どこまで核装備の能力を高めるのか。核先制不使用を宣言しているが、信頼できるのか。中国の戦略は不透明感が強く、そこに根差す疑心暗鬼は北東アジアの軍拡競争の火種となりかねない。
核軍縮には反対しないが、米ロの削減が先決だ。それが中国の立場だが、もはや、その言葉には閉じこもれない。オバマ大統領によってすでに、核軍縮の歯車は大きく回った。
中国の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席は昨年の国連総会で「中国は一貫して核兵器なき世界を主張してきた」と強調した。中国には国連安全保障理事会の常任理事国としての、大きな責任がある。米ロの動きを待つばかりでなく、自ら具体的な構想を示して欲しい。とりわけ、北朝鮮の核問題も含めた北東アジアでの核軍備管理、地域安全保障への将来構想を示してもらいたい。
米中は経済相互依存を強めている。相手を徹底破壊する冷戦期のような「恐怖の均衡」による抑止は、むしろ現実味に欠ける。米中間で、核の役割縮小や包括的核実験禁止条約の批准などについて対話を深めるべきだろう。
来週、米国で開かれる核保安首脳会議に出席する胡主席はオバマ大統領と会談する。核拡散、核テロを防ぐためにも、G2による核軍縮協力の出発点にすべきである。
企業が負担する税の水準をどう下げるか。世界の企業を日本にもっと呼び込んで投資や雇用の機会を増やす成長戦略の観点から、避けて通れない課題になってきた。
鳩山由紀夫首相が国会答弁で「国際的な流れにふさわしく減税の方向に導いていくのが筋だ」と述べたように、各国は法人税を競うように引き下げてきた。グローバルな市場を動き回る資本を引きつける戦略だ。
国内景気を良くして雇用を増やすには企業の投資が増え、オフィスや工場、販売拠点がたくさんできるようにしたい。それには法人の税負担は低い方がいい。各国の引き下げ競争はそう考えてのことだ。
日本も国税である法人税を下げ続け、1980年代末に40%以上だった基本税率は99年から30%になっている。だが、地方税である法人事業税などを合わせると約40%だ。
これは米国と同水準だが、30%を切る欧州主要国や韓国の24%、中国の25%などと比べると高い。
社会的存在である企業が税負担をするのは当然だ。とはいえ海外との競争を意識すれば、税率の引き下げを考えるのもやむを得ないだろう。
参考になるのは、2008年のドイツの法人税改革だ。税制の例外措置や抜け道を封じて課税対象を拡大した。好況も幸いし、税収を減らさずに税率を39%から29%台に下げた。
英国も同じ時期にやはり税収を減らさずに28%まで下げた。
日本でも課税基盤の拡大を図れば、税収を減らさずに税率を数%幅で引き下げることも可能なはずだ。
これまで研究開発投資額の大きい企業に対する優遇税制は競争力の強化に役立った面もある。だが、税率を下げれば、中小も含む企業全体が恩恵を受けることができる。
さらに大幅な引き下げとなると、容易なことではない。
追加の財源が必要だ。それを消費税や所得税の引き上げなど個人の負担増でまかなうことが考えられる。しかし、家計に負担を求めれば反発が予想される。消費税を引き上げるなら、増税分を医療・福祉や年金に使うべきだとの声が上がるだろう。
減税の恩恵を受ける企業は、国内で雇用を維持・創出し、社会保障で責任を果たすことが前提となる。減税がいずれ家計にプラスの効果をもたらすという設計図も欠かせない。
税率を下げさえすれば企業の投資が増えるわけではない。日本の市場と社会に、ビジネスの機会と将来性がみなぎることが大切だ。
だからこそ消費税をどうするかも含めて税制改革と成長戦略の全体像を描き、夏の参院選で堂々と国民に信を問う。そのことを与野党に求めたい。