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自動車再編―エコカーの世紀へ加速を

 環境にやさしいエコカーの時代を、予想以上の速さでたぐり寄せるテコにしたい。

 日産自動車・仏ルノーの連合と独ダイムラーが包括的な資本・業務提携をきのう発表した。地球温暖化対策と新興国台頭に彩られる新世紀。その中で生き残りをかける自動車メーカーの世界的な再編のうねりだ。

 昨年の販売実績は、独フォルクスワーゲンとスズキの連合が860万台で首位。トヨタ自動車グループが781万台で2位。日産・ルノー・ダイムラー連合は計764万台で3位になる。748万台で4位につける米ゼネラル・モーターズ(GM)と合わせ、超大手が競う構図が浮かび上がった。

 大量生産の権化といえる自動車産業がスケールを追求するのは本能ともいえるが、環境対応の研究開発競争と世界市場での陣取り合戦が拡大志向に一段と拍車をかける。

 日米欧の先進国では地球温暖化対策と絡んだ2020年代向けの燃費規制の強化が待ったなしだ。小型車はもちろん、ハイブリッド車や電気自動車、燃料電池車の開発・生産には多大な投資が必要だ。各メーカーが個別に取り組むのでは負担が重すぎるから、合従連衡は必然となる。

 部品の共通化や新技術の効果をフルに引き出すにも、連合を組んで世界の市場をより大きく囲い込むことが重要になる。仮にライバルから技術を買う場合でも、規模が大きければ交渉を有利に運べる。

 日産・ルノー・ダイムラー連合は、このような攻守両にらみの動きといえる。商品構成が中大型車に偏るダイムラーは、ルノーの小型車技術、日産の電気自動車や燃料電池の技術を取り込みたい。日産・ルノーはダイムラーの先端的なディーゼルエンジン技術がほしい。そんな相互補完が期待されているようだ。

 合併や買収で大が小をのみ込むのではなく、相互出資で緩やかに連合するのが今回の再編の特徴だ。10年余り前にも冷戦崩壊後のグローバル経済化を受けた自動車再編ブームがあり、98年にはダイムラーが米クライスラーと合併した。しかし、経営の融合が進まず、07年には合併を解消。「巨大すぎて経営できない」の教訓を踏まえ、経営の自主性は守りながら環境や新興国市場戦略という課題で連携する形に進化した面もある。

 トヨタ自動車がマツダにハイブリッド技術を供与する。中国メーカーは米フォード傘下のボルボを買収、GM傘下のサーブから一部車種の知的財産権を買った。韓国メーカーも再編に絡んでくる可能性がある。

 世界の自動車地図は今後も塗りかわる。それを低炭素時代の自動車文明へのアクセルにしてほしい。

宇宙戦略―無限の空間、有限の予算

 宇宙開発は、時代の節目を迎えている。宇宙飛行士の山崎直子さんが乗ったスペースシャトル・ディスカバリーの飛行がそれを象徴している。

 シャトルの乗組員は7人中3人が女性で、ドッキングした国際宇宙ステーション(ISS)でも1人が長期滞在しており、女性は合わせて4人となった。長期滞在組の6人の中には野口聡一さんもおり、日本人2人の初顔合わせも実現した。

 宇宙活動が新しい時代に入ったことを感じさせる光景だが、一方で、間違いなく、一つの時代の終わりをも告げている。

 1981年の初飛行から約30年、老朽化の目立つスペースシャトルは今年中には引退する予定だ。日本人がスペースシャトルで飛行するのは、今回が最後になるだろう。

 来年からは、ISSに人を運ぶのはロシアのソユーズ宇宙船だけになる。

 宇宙開発をめぐる状況は今、内外ともに大きく変わりつつある。

 日本も、とりわけ巨費を要する有人活動についてどう進めるのか、広い見地から考えるべきときを迎えている。

 米国のオバマ政権は2月、ブッシュ前政権の有人月探査計画を中止する一方、2015年までしか決まっていなかったISSの運用を20年まで延ばす考えを明らかにした。シャトルの後継となる、宇宙への乗り物の開発は民間に託すという。

 先端的な科学技術の先導役としての宇宙開発の重要性は認めるけれど、予算難もあるので効率的に進めよう、という考えのようだ。

 日本も政権交代で、宇宙開発の戦略は練り直しが迫られている。

 内閣官房に置かれた宇宙開発戦略本部が自民党政権時代に宇宙基本計画をまとめている。二足歩行ロボット、次いで有人による月探査計画も盛り込まれた。しかし、歩調を合わせていた米国の月探査計画が後退したこともあり、宙に浮いてしまった。

 一方、前原誠司宇宙開発担当相の下で、有識者会議が2月から今後の宇宙開発について議論を始めたところだ。

 宇宙開発は、技術のフロンティアであると同時に、ISSには米ロのほか欧州やカナダなども参加しているように国際協力の場でもある。目先の利益だけで判断はできない。

 だが、予算が限られているのは日本も同じだ。有効に使うのは当然だ。日本の強みをさらに伸ばし、国際的にも存在感を発揮することを考えたい。

 まず、毎年約400億円かかるISSの日本の実験棟「きぼう」の運用の意義を再確認することが欠かせない。

 さらにその先に、自前の有人飛行をめざすのか。むしろ日本が得意なロボット技術の追究に力を注ぐべきなのか。しっかりした戦略を立てたい。

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