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4月7日付 編集手帳

 NHKが料理番組で「ぶどう酒」の呼び名を「ワイン」に改めたのは1982年(昭和57年)という。作家、北村薫さんの『続・詩歌の待ち伏せ』(文芸春秋)に教えられた◆その21年前、1961年(昭和36年)の事件である。三重県名張(なばり)市で農薬入りのぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」ほど、歳月を感じさせる事件名はなかろう◆最高裁が5日付で、再審を開くかどうかを決める審理を高裁に差し戻したことで、奥西勝死刑囚に再審の扉が開かれる可能性が出てきた。混入したとされる農薬と飲み残しから検出された農薬の成分鑑定が焦点になる◆容疑者の逮捕を報じた日の本紙をひらく。黒沢明監督の映画『用心棒』の広告があり、松本清張の新聞小説『砂の器』があり、テレビ欄には『バス通り裏』や『ボナンザ』といった番組が並んでいる。その日、35歳の奥西死刑囚はいま、84歳である◆1年、否、1日の意味が例えようもなく重い高齢の身を考えればまずは再審を開始し、その法廷で真相を解明する――差し戻しよりも踏み込んだ決断が最高裁にはあってもよかっただろう。

2010年4月7日01時23分  読売新聞)
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