自民党に離党届を提出した与謝野馨元財務相らが新党結成に向けた動きを加速している。夏の参院選での民主党の過半数阻止が狙いだというが、なぜ今、新党なのか、疑問を感じざるを得ない。
与謝野氏に続き、園田博之前幹事長代理も自民党に離党届を提出した。無所属の平沼赳夫元経済産業相らとともに、週内にも新党を結成する段取りだという。
新党結成理由は、園田氏の発言を要約すると次のようになる。
参院選で民主党の過半数を阻止しなければ日本は滅びる▽しかし谷垣禎一総裁率いる今の自民党では民主批判票の受け皿にならない▽ならば新党を結成して、自民党とともに民主党を挟み撃つ−。
共同通信の最新世論調査によると、自民党を離党した渡辺喜美元行革担当相率いる、みんなの党の支持率が9・6%に上り、民主、自民両党に次いで第三位となった。
これは二大政党に対する失望感の裏返しであり、与謝野氏らの新党結成には、みんなの党の好調さに触発された面もあるだろう。
ただ、「第二自民党」をつくって民主党を挟撃するという選挙戦略はいかにも分かりにくい。国民の理解が得られるのだろうか。
与謝野氏らの行動は谷垣執行部への警鐘と言えなくもないが、本来なら党にとどまり、最後まで党再生に死力を尽くすべきだった。離党が、自民党という「泥舟」からの逃避であってはならない。
自民党分裂で、政権与党に対する追及が弱まらないかも心配だ。
世論調査では与謝野新党に期待しない人が65・9%に上り、期待する人は27・1%にとどまった。
与謝野新党に、かつての日本新党や民主党の結党時のような新鮮味や高揚感が感じられないのは、新党の顔触れに、自民党出身のベテラン議員が並んでいることと無縁ではあるまい。
そもそも新党は政策実現が目的のはずだが、与謝野、平沼両氏の間では、憲法、郵政、財政再建、経済成長などをめぐって考えに開きがある。
付言すれば、与謝野氏は自民党の比例代表選出議員だ。離党しても議員職にとどまることは認められているが、他党の代表格に就くのは違和感がある。新党をつくるなら議員辞職するのが筋だ。それが保守政治家の矜持(きょうじ)ではないのか。
いずれにせよ、与謝野新党結成へ賽(さい)は投げられた。しかし、その出目を決めるのは、あくまで有権者であることを自覚したい。
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