HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 03 Apr 2010 02:14:55 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:イラク組閣へ 宗派を超えた『連立』を:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

イラク組閣へ 宗派を超えた『連立』を

2010年4月3日

 イラクの総選挙で勝ったのは宗教色を薄めた会派だった。和解を願う民意の反映でもある。政権づくりへ早くも主導権争いが起きているが、安定した国家再建を願う国民の声を忘れないでほしい。

 連邦議会(定数三二五)で、最多の九十一議席を得たのはアラウィ元首相派「イラキーヤ」だった。同氏はイスラム教シーア派だが、特定の宗派にとらわれない世俗主義を強調。スンニ派有力政治家を取り込み、旧フセイン政権の支持基盤だった中、西部のスンニ派地域で圧勝、さらに南部シーア派でも善戦した。

 選挙前には優勢視されたシーア派のマリキ首相派「法治国家連合」は、イラキーヤに二議席及ばぬ八十九議席で第二党となった。やはり宗派色を抑え、首都バグダッドで勝利したが、旧政権のスンニ派有力候補者を出馬禁止にしたことで、スンニ派地区で惨敗した。

 シーア派色の強い「イラク国民同盟」は七十、「クルド同盟」四十三議席など全体的に宗派色が濃い会派は退潮し、結果的に挙国一致の民意が強まったことは歓迎すべきだろう。

 過半数を確保した会派はなく、今後は将来に向け安定した連立政権を樹立できるかが焦点だ。これは中東地域の安定にかかわる世界の関心事となっている。

 イラクの憲法では新しい連邦議会で選出される大統領が最大会派に組閣を要請する。第一党のアラウィ氏は「すべての会派と話し合う用意がある」と連立主導の構えだが、第二党のマリキ首相は不正選挙の異議申し立てを見せる一方、一度は袂(たもと)を分かったイラク国民同盟との復縁を探っている。

 仮にアラウィ内閣が誕生すればスンニ派の復権が進み、宗派抗争収束への期待が膨らむかもしれない。逆にマリキ首相らのシーア派再結束で、イラキーヤが外れれば新たな抗争を招く恐れがある。そういう難しい状態をどうまとめあげるか。前回はマリキ政権発足まで半年かかった。時間をかけてでも融和と均衡を基本にじっくり取り組んでほしい。失敗すればテロの血が流れる。

 幸いイラクには埋蔵量世界三位の石油が眠っている。日本をはじめ欧州、中国などが採掘権を落札済みだ。再建資金は国の安定さえ整えば流れ込んでくる。米軍の戦闘部隊は八月末に、残る五万人も来年末には完全撤退する。自立した国家、国民融和優先の政権づくりをまず成し遂げ、安定した国家運営につなげてほしい。

 

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