鳩山由紀夫首相は党首討論で、普天間飛行場返還について、五月末までに移設先と米政府の理解を得ると言い切った。「最低でも県外」を公約した首相は、政治生命を賭して決着に尽力すべきだ。
谷垣禎一自民党総裁が追及の柱に据えたのが普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の返還問題。
首相は、代替施設の移設先について「五月末までに米国に提示して理解を求め、新しい移設先にも理解を求める。結果として政府案を認めていただく」と言明した。
谷垣氏が五月末までに決着できなければ首相辞任か衆院を解散するよう求めると、首相は「命懸けで、体当たりで行動する。必ず成果を挙げる」と応じた。
党内から追及不足と指摘されてきた谷垣氏が気合を入れて臨んだこともあって、丁々発止のやりとりが続いた。これが二大政党党首による討論の醍醐味(だいごみ)だろう。
普天間返還問題は、在日米軍基地の約75%が集中する沖縄県民の負担軽減と米軍の抑止力確保を両立させなければならない難問だ。
解決の難しさは、返還合意後十四年を経ても実現していないことや、移設先選びをめぐる鳩山内閣の迷走ぶりを見れば分かる。
しかし、首相は党首討論で「腹案」があると断言した。
詳細は明らかにされなかったが、これが米軍キャンプ・シュワブ(名護市)陸上案や米軍ホワイトビーチ(うるま市)沖合埋め立て案という、いわゆる「沖縄県内移設」であってはならない。
首相は昨年の衆院選以来、県外・国外移設の検討に言及し続け、負担軽減を望む沖縄県民の期待を大きく膨らませた。これを裏切れば、政治への信頼は地に落ちる。
腹案が、これまで言い続けてきた県外・国外への移設案であることを強く期待する。
首相は先に、普天間飛行場の継続使用に含みを持たせているが、普天間問題が「返還」問題であることも忘れてもらっては困る。
たとえ腹案が政府案となっても、移設先住民と、現行のシュワブ沿岸部案を最善とする米政府、それぞれの同意を得るという作業が困難を極めるのは必至だ。
場合によっては、首相自身が説得に乗り出す必要も生じるだろう。政治生命を賭して、文字通り「体当たり」で臨んでほしい。
われわれは首相の覚悟を見届けたい。それが政権交代を選択した国民の責任でもあるからだ。
この記事を印刷する