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1月は9分。2月は28分。3月は42分。東京で、ひと月のうちに早くなる日の出の時間である。朝が駆け足になり、別れから出会いへ季節が変わる弥生の言葉から▼名古屋の藤吉宇代(たかよ)さん(74)が夜間中学を卒業した。貧しく育ち、中卒の学歴もなく苦労した。ローマ字が読めるようになったとき、英語の先生と涙を流した。「この前ね、数学のルート(√)が分かったの。もっと早く勉強したかったわ。そしたら高校に行けたかも」▼神戸土産で知られる「瓦せんべい」の菊水総本店が営業を再開した。和菓子離れによる経営難で一度は廃業したが、元社員4人がお金を出し合った。堀木利則さん(56)は「最初は給料がわずかでもいい。仕事を仲間と続けられるのがうれしい」。なじみ客にも励まされての再出発だ▼パラリンピックのあったバンクーバーで車いすの前市長サム・サリバンさん(50)は言う。「多くの人は市長が障害者だから街のバリアフリーが進んだと思っているが、事実は逆。街のバリアフリーが発展していたから私が市長を務められた」▼一人娘を亡くした兵庫の安永郁子さん(52)に、付属池田小の事件で娘を失った本郷由美子さん(44)が精神対話士として寄り添う。安永さんに笑顔が戻り始めた。「(娘への思いは)冷凍庫に入れ、必要なときに出すんです。持ち続けたり、捨てたりするのではなく、その真ん中で」▼朝日俳壇に山岡冬岳さんの作〈妻も子も出来て大学卒業す〉。直線ばかりが生きる道ではない。曲線で描かれる人生のしなやかさ、そして深さ。