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3月29日付 編集手帳

 著書『菊と刀』で「日本人は罪の重大さよりも恥の重大さに重きを置く」と指摘したのは、米人類学者のR・ベネディクト夫人だった。世間の目を気にして自らの振る舞いを正す「恥の文化」であり、善悪や神への罪悪感を行動規範とする欧米型の「罪の文化」とは異質だと説いた◆その「恥の文化」につながるものが、日本から消えつつある。そう思わせる光景が(ちまた)にあふれるようになった。電車の優先席に座って携帯電話のボタンを押し続ける若者。化粧に余念がない女性……。人が(しゅう)()心を失うのは、どうやら年齢を重ねた結果だけではないらしい◆今頃そんな時代の変化に気づくのは、蛍光灯だと言われるかも知れない。そんなぼんやりした頭で自分に問いかける。キリスト教圏やイスラム教圏と異なり、絶対神を欠くこの国で、「世間体」に代わる新たな物差しが生まれるのだろうか◆卒業式が続いた週が終わり、入社・入学式シーズンが始まる。一時代を築いた団塊の世代の最後の組が職場の一線から退く。別れと出会いの季節は、世代交代を促し、社会の相貌(そうぼう)をまたひとつ変えることになるのだろう。

2010年3月29日01時14分  読売新聞)
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