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3月28日付 編集手帳

 「彎●羅鍼(わんからしん)」と書くらしい。東京・深川の富岡八幡宮に立つ、伊能忠敬の像が手にしている(つえ)の名である(●は穴かんむりに果)◆伊能は寛政12年(1800年)、55歳の時にこの神社で無事を祈願した後、蝦夷地(えぞち)へと最初の測量に出た。像は力強く第一歩を踏み出しているところだ。無論、以後4000万歩の距離を踏破した健脚が、歩くのに杖の助けを必要とした訳ではない◆握り手に付く、輪を組んだような部品を彎?と呼ぶのだろう。その中に羅針盤が仕込まれている。どんな傾斜地に杖を立てても磁針面は水平となって、針は常に両極を指す。方位を1度まで読み取れる精巧なものだ。故郷・千葉県香取市の伊能忠敬記念館に実物がある◆文化審議会が、伊能の用いた測量器具や制作した地図などを国宝とするよう答申した。200年前にあれほど精緻(せいち)な日本地図を作った偉業からして当然であろう◆隠居後も学び続けて新たな事に挑戦する伊能の生き方は今日の高齢社会に、そして、道なき道においても揺るがずに方向を示す彎?羅鍼は今日の政治に、大切なことを示唆しているようだ。なかなか深い国宝指定かもしれない。

2010年3月28日01時38分  読売新聞)
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