HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 27 Mar 2010 20:16:25 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:春を告げる白木蓮(はくもくれん)の高木が、美しい白い花を一…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2010年3月27日

 春を告げる白木蓮(はくもくれん)の高木が、美しい白い花を一斉に咲かせている。その下を満面の笑みを浮かべた男性が、子どもに戻ったように両手を広げ、彼を待つ人たちのところに駆け寄った▼足利事件の再審できのう、「完全無罪」を勝ち取った菅家利和さんだ。宇都宮地裁の正門で待つ支援者から「おめでとう!」と祝福の声が飛び、拍手がわき上がった▼その直前、法廷では、刑事裁判としては極めて異例の出来事が起きていた。「自戒の意味を込めて謝罪させていただきます」。判決の言い渡しの後、佐藤正信裁判長と二人の陪席裁判官が立ち上がり、菅家さんに深々と頭を下げたのだ▼率直な言葉は十七年半の間、無実の罪で囚(とら)われていた菅家さんの心に強く響いたのだろう。「感動しました。ああいう形で謝罪するとは思ってもみませんでした」と語った▼再審無罪は、裁判所や捜査機関だけでなく、メディア側の自戒も促した。耳を澄まし菅家さんの小さな叫び声を聞き取る感性のある記者がもっと多ければ、冤罪(えんざい)は早く晴らせたのではないか。そう痛感している▼無実の人がなぜ自白するのか。判決は最大の疑問に答えを出していない。取り調べの全面可視化の動きとともに、誤判の原因を究明する公的な第三者機関の設置を日弁連が求めている。冤罪の「語り部」になる。そう誓った菅家さんの新たな闘いが始まる。

 

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