HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 17869 Content-Type: text/html ETag: "6198b5-45cd-56bc5e00" Cache-Control: max-age=5 Expires: Sat, 27 Mar 2010 21:21:43 GMT Date: Sat, 27 Mar 2010 21:21:38 GMT Connection: close asahi.com(朝日新聞社):天声人語
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天声人語

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2010年3月28日(日)付

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 ライバル意識というものは、相手が身近なほど、そして年齢が近いほど高まるようだ。親の背に並んだ喜びより、弟に超された悔しさを思い出す。この季節、職場の花見などでは第三者がうかがい知れぬ火花も散る。〈夜桜やひとつ筵(むしろ)に恋仇敵(がたき)〉黛まどか▼下町で建設中の東京スカイツリーが、週明けにも東京タワーの333メートルを抜くという。あとで生まれるほど大きくなるのは人も建物も同じらしい。浅草あたりからは、そろそろ見上げる感じになってきた▼東京という「ひとつ筵」の上ながら、二つの塔には半世紀の年の差がある。ライバルではあるまい。一方が戦後復興のシンボルなら、他方はその到達点をしるす記念碑。昭和と平成の二つの時代が、それぞれに別のものを背負わせた▼敗戦13年で世界一を誇った東京タワーは、「ありたい姿」で国民を鼓舞した。「日本の科学技術の勝利をうたう金字塔」と自賛したのは、創設者の前田久吉だ。日本製品の飛躍、高度成長、テレビの普及とセットで、タワーは人々の心に刻まれた▼ツリーに時代的な役割があるとしても、そこまでの熱さはなかろう。衰退の兆しが国を覆う中、このくらいはできますよと、どこか淡々と空に伸びている風である。だが、この国に隠居の余裕はない。せっかくの大事業を、せめて反転の一里塚にできないものか▼完成は再来年の春という。政治も経済も、塔が634メートルにまで伸び切る2年間が正念場となる。衰えの芽を摘み、内向き思考を脱し、再び歩き出す日本を、その高みから見てみたい。

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