HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 60603 Content-Type: text/html ETag: "fd188-1248-724b34c0" Expires: Fri, 26 Mar 2010 23:21:45 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Fri, 26 Mar 2010 23:21:45 GMT Connection: close 3月27日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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3月27日付 編集手帳

 薄情な大家(おおや)から理不尽な仕打ちを受けた大工政五郎が、炎を吐くようにタンカを切る。〈(よえ)え俺たちにゃ、(つえ)えお奉行さまてえ味方がついてら。お白洲(しらす)ィ出て、砂利を握って泣きッ面をするねえ!〉。落語『大工調べ』である◆正邪を見分ける「強え味方」がいるはずの法廷で、身に覚えのない罪に問われ、無期懲役の刑に服した人には、毎日が砂利を握って泣く心境であったろう◆4歳の女児が殺害された「足利事件」の再審で、宇都宮地裁はきのう、菅家利和さん(63)に無罪を言い渡した。裁判長が謝罪し、裁判官3人が起立して菅家さんに深々と頭を下げたという◆当時、導入されたばかりで精度に難点のあったDNA鑑定を過信し、その鑑定結果をもとに引き出された自白を過信し、“よもや…”の声を上げられなかったのは検察官や裁判官だけではない。報道機関も同じである◆男盛りの17年半を拘置所と刑務所で過ごした菅家さんに、失われた歳月を返して差し上げることはできない。無実の罪に砂利をつかんで泣く人が二度と現れない世をつくること――それだけがせめてもの償いであると、胸に刻む。

2010年3月27日02時25分  読売新聞)
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