子ども手当法が成立した。衆院選マニフェスト政策の実現だ。鳩山内閣としては政権浮揚につなげたいところだろうが、最近の内閣の混乱は目に余る。鳩山由紀夫首相の統治力への疑問が消えない。
鳩山首相は記者会見で、二十四日成立の二〇一〇年度予算について「メリハリのついた予算が出来上がったなと思う」と自賛した。
厳しい経済情勢の中、予算の年度内成立はプラス要因である。マニフェストで約束して通常国会に提出した重要法案は、二十六日成立の子ども手当法に続き、高校無償化法案も月内に成立予定だ。
首相は会見で「課題山積だが、これからが新たなスタートだとの思いで頑張る」と語った。
「政治とカネ」の問題で内閣支持率が下落しており、予算や子ども手当法の成立を機に、反転攻勢に出る決意を表したのだろう。
ただ、内閣の体をなしているとはとても言えない最近の混乱ぶりをみると、首相に内閣を束ね、国を統治する力があるのかという思いを抱く。郵政改革法案をめぐる閣内での意見対立が代表例だ。
国民新党の亀井静香郵政改革担当相がゆうちょ銀行の預入限度額を二千万円に引き上げるとした内容に閣内から異論が相次ぎ、首相が了解したかどうかも、首相と亀井氏の見解が食い違う始末だ。
政治主導を掲げる以上、政治家同士が政府内で議論することは当然だが、混乱を見せつけられる国民にとっては愉快ではない。
米軍普天間飛行場の返還問題でも、首相は沖縄県外への移設を目指す考えを強調してきた。
しかし、首相の思いは政府内にどれだけ浸透しているのだろう。三月末に決める予定の政府原案は県内移設が軸だと聞くと、首相発言の意味を疑ってしまう。
首相は会見で年金、社会保障、財政、「政治とカネ」について与野党協議の必要性を強調した。
重要な問題提起であるが、それを軌道に乗せるには並外れた政治力が要る。何よりも、明確な展望と、実現に向けて政治生命を賭す覚悟が求められる。自らの内閣すら十分統治できていない今の状況を脱することが先決だ。
首相は「国民にも辛抱強くご指導いただきたい」とも語った。
有権者の側にも自ら選択した政権交代の行く末を温かく見守りたい気持ちはあるのだろうが、新政権は発足からすでに半年である。いつまでも甘えは許されない。
この記事を印刷する