HTTP/1.1 200 OK Date: Thu, 25 Mar 2010 21:15:08 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:開花したばかりのソメイヨシノが寒の戻りの前に、つぼみのまま…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2010年3月25日

 開花したばかりのソメイヨシノが寒の戻りの前に、つぼみのまま身を固くして耐え忍んでいる。きょうも冬のような天気らしく、お花見はしばらくお預けか▼ひらひら散る桜は美しいが、花びらが五枚くっついたまま、丸ごと地面に落ちているのを見たことがある。蜜(みつ)を吸うためスズメが付け根から食いちぎるせいだ▼メジロやヒヨドリは細長いくちばしを上手に使って桜の蜜を吸う。スズメのくちばしは太くて短い。ちぎる瞬間に蜜をなめるらしい(唐沢孝一著『江戸東京の自然を歩く』)。切られた花は風車のように回って落下するので、スズメがいたずらしているように見えるが遊びじゃない▼ヤマザクラ、エドヒガンなど桜の種類は多いが、いまは日本の桜の八割程度はソメイヨシノが占めているようだ。幕末期から、東京の染井から全国に広がった。十年ほどで花をつけて、約二十年すれば花盛りとなるが、早ければ五十年で枯れ始める▼葉が出る前に豪華絢爛(けんらん)に枝いっぱいの花をつけ、一斉に散ってしまうその姿から、潔く散ることが称賛された戦時中に、軍国主義のシンボルになった不幸な歴史がある。飛行機につるされ体当たりする人間ロケットも『桜花』と名付けられた▼ライトアップされた桜を観賞しながら、酒を飲めるような平和な世の中になった。その幸せをかみしめながら、花をめでようと思う。

 

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