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Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
かつての中国では「亡国の遊戯」とされた麻雀(マージャン)だが、改革開放後は復権した。15年ほど前に訪ねたときは、まだ後ろめたかったのか、牌(パイ)を積むことを「万里の長城を修理しよう」と隠語で言って卓を囲んでいた▼その「万里の長城」の例えが、米国のネット検索大手グーグルの、中国本土からの撤退で飛び交った。当局の厳しい検閲要求を各国メディアがそう表した。都合の悪い情報は徹底してはじき返す。このゆゆしき長城は、ポンだのチーだのという長閑(のどか)な話とはわけが違う▼きのう小紙には別の言論規制も載った。当局が中国メディアに18分野の報道禁止を命じたという。官僚の腐敗から大学生の就職難、食用油の高騰まで多岐にわたる。いま一番の関心事について、人々は耳目を封じられたようなものだ▼言論や表現の自由はよく「最も大切な自由」と言われる。他のもろもろの自由が侵されていないかを監視し、侵害があれば、告発や異議は言葉や映像でなされる。表現の自由は「自由軍の大親玉」だと、作家の井上ひさしさんは言っている▼その自由を欠いたまま中国は成熟していけるのか。中国政府は冷静に考えるべきだろう。いくら金回りが良くなっても、内面の伴わない「子どものような大人」では、真の敬意は払われにくい▼「民の口を防ぐは、水を防ぐよりも甚(はなは)だし」と3千年の昔、周時代の故事は言う。批判を封殺し続けた王は、ついには民衆に追放されたそうだ。検閲という長城をいくら補強しても水は防げまい。ネット時代の民の口は往時の比ではない。