北海道教職員組合から違法献金を受け取った罪で、民主党の小林千代美衆院議員陣営の経理担当者らが起訴された。小林氏は議員辞職も離党も否定したが、けじめなしで国民の理解を得られるのか。
小林氏は、起訴を受けた記者会見で「道義的責任は痛感している」と語ったものの、辞職も離党もしない考えを明らかにした。
小林氏が二回目の当選を果たした昨年八月の衆院選では、公職選挙法違反で元連合札幌会長が一審で有罪となっている。禁固刑以上が確定し、連座制が適用されれば、小林氏は議員失職する。
一連の事件は潔白だというなら堂々と説明すればいい。
ただ、国民への納得いく説明を欠いたまま、離党も辞職もしないという対応が、同様に「政治とカネ」の問題を抱える鳩山由紀夫首相や小沢一郎幹事長の責任問題への波及を避けるためだとしたら、国民は納得しまい。
小沢氏の資金管理団体をめぐる政治資金規正法違反事件では、小沢氏と、起訴された石川知裕衆院議員に、政治倫理審査会の審議や参考人招致に応じるなど、国民への説明に努めるよう求めてきた。
石川氏は離党はしたものの、両氏がその後、説明責任を十分果たしているとは言えない。小林氏の対応の背景に、民主党の自浄能力の欠如という本質的な欠陥があるのなら見過ごせない。
小林氏が辞職しないのは、夏の参院選前の補欠選挙を避けるためとの見方がある。党執行部が、選挙や政局の思惑ばかりを先行させるのなら、新政権に「政治とカネ」の問題からの決別を託した国民の心は離れていくばかりだ。
政治家をめぐる検察捜査は、その在り方が問われ始めてもいるが、「政治とカネ」に対する国民の視線は依然厳しい。鳩山内閣や民主党の支持率が低落傾向にあるのは、国民が対応の不十分さを感じているからではないのか。
「非小沢」派の閣僚からは「民主党らしさ以前の問題として政治家としてのけじめ、倫理観が厳しく問われている」(前原誠司国土交通相)などの声が出始めているが、実際の党運営に反映されなければ、遠吠(とおぼ)えにすぎない。
鳩山首相は「これで終わったとは思っていない。何らかの対処をする必要がある」と語った。首相が政治への信頼回復に指導力を発揮するのは当然だ。さもなければ、小沢氏に権力が集中する「二重権力批判」はいつまでも消えない。
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