HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Tue, 23 Mar 2010 21:16:28 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:平成の大合併で、数多くの村の名前が地図から消えてしまったが…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2010年3月23日

 平成の大合併で、数多くの村の名前が地図から消えてしまったが、この村の名前を記憶している人は多いだろう。山梨県上九一色村。サティアンと呼ばれるオウム真理教の教団施設が集まっていた富士山の麓(ふもと)の村だ▼警視庁などが強制捜査に踏み切ったのは、十五年前の三月二十二日。首都を大混乱に陥れた地下鉄サリン事件の二日後だ。カナリアの入った鳥かごを握りしめた防毒マスク姿の捜査員が先頭に立っていた▼教祖の麻原彰晃死刑囚や最高幹部が根こそぎ逮捕され、破産宣告を受けたことなどで信者数は激減したが、いまもかつての教祖を信奉する信者がいる▼公安調査庁によると、教団の後継団体に昨年新たに百人余りが入信したというから驚かされる。事件当時は未成年だった者が半数以上で、凶悪事件を知らない青年層に絞った勧誘活動と推測される。被害者や遺族には許し難いことだ▼二〇〇六年三月、サティアンが集中した村の南部は富士河口湖町に編入され、上九一色村の名は消えた。春爛漫(らんまん)のきのう、教団施設があった場所を訪ねた。サリン量産プラントなどはすべて取り壊され、事件の痕跡を残すのは小さな慰霊碑しかなかった▼四合目ぐらいまで雪に覆われた雄大な富士山が迫ってくる。大自然の美しさも、考えることを放棄した出家信者の心を動かさなかった。そう考えると、むなしくなった。

 

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