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米国のレーガン元大統領(共和党)は言葉が巧みだった。こんな警句を残している。「皆さんが必要なものを何でも与えられる強力な政府は、皆さんから何でも取り去ってしまう強力な政府ということになります」▼政治学の故・内田満氏によれば、あれもこれもと政府に求める人たちへの反論だったらしい。国民生活への政府の大きな関与を嫌う伝統が、米国にはある。いわゆる「小さな政府」をうたう共和党の支持者にはその色が濃い。それが、先進国の中で唯一、国民皆保険制度がない背景の一つともされてきた▼その米国で、皆保険をほぼ実現する法案が議会を通った。歴代大統領がなしえなかった課題である。わずか7票差の薄氷を踏むような多数決だったが、オバマ大統領(民主党)の執念が実ったといえる▼共和党からは「社会主義につながる法案だ」といった批判がわいたそうだ。当否はおいて、「政治とは情熱と判断力を駆使しながら、堅い板に力をこめて、じわじわと穴をくりぬいていく作業」だという名高い定義を、太平洋越しに見た思いがする▼おおざっぱに流行語に例えれば、弱肉強食の共和党に対し、弱者の救済をうたう民主は草食系となろうか。どちらが自分の信じるアメリカなのか。「国のかたち」を国民に問う、世論二分のテーマでもあったようだ▼さて、かの地から目を戻せば、日本では新年度予算がきょう成立する。国の近未来を描く数字が並ぶが、理念の輪郭はおぼろげだ。閉塞(へいそく)感をくりぬくリーダーシップが、いま何よりも政治にほしい。