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過ちを改めるにはばかることなかれという。
民主党が、小沢一郎幹事長ら執行部への批判を繰り返していた生方幸夫副幹事長の解任を撤回した。小沢氏が生方氏に直接会って、続投を求めた。
党内言論の封殺への世論の激しい批判に押され、土壇場で方針転換した。そこまで追い詰められたということでもあろう。
今回の問題で民主党が負った傷は実に深い。
最大の実力者である小沢氏に批判的な言動は許さない。「側近」が小沢氏の意向を忖度(そんたく)して締め付けに動く。自民党時代からの「小沢支配」の流儀が、政権交代後もそのまままかり通っている。そのことを、あまりにわかりやすい形で見せつけたからだ。
先週末のテレビ各局の世論調査では、鳩山内閣の支持率が続落しただけではない。民主党の政党支持率も目立って下がった。民主党の議員は深刻に受け止めるべきである。
単に生方氏の解任をとりやめただけで、民主党に対する信頼が回復するはずもない。何よりけじめをつけるべきは、生方氏も指摘してきた政治とカネをめぐる小沢氏の政治責任である。
民主党の小林千代美衆院議員の陣営が、北海道教職員組合から違法な選挙資金を受け取ったとされる事件の刑事処分が決まった。
一連の政治資金疑惑に法的なひと区切りがついたこのタイミングこそ、政治とカネの問題に主体的にけじめをつける機会と心得るべきだ。
小林氏は自らは事件に関与していないとして、離党も議員辞職もしない考えを示した。小沢氏や鳩山由紀夫首相に責任論が飛び火するのを恐れているのだとしたら、本末転倒の判断だ。
トップ2人が疑惑を抱えたままの民主党政権の限界といえる。
まず、小沢氏が国会の場で説明責任を果たすことだ。
小沢氏の不起訴が決まって1カ月以上たつが、報道各社の世論調査では、いまだに小沢氏の幹事長辞任を求める声が7割前後ある。時が経過すれば忘れるほど有権者は甘くない。
企業・団体献金の禁止など、政治資金規正法改正に向けた与野党協議も一向に緒に就かない。その前提として自民党など野党が求める小沢氏の国会招致に、民主党が応じていないからだ。鳩山首相は党代表として小沢氏に出席を指示し、早く与野党協議の環境を整えるべきだ。
民主党がいつまでも政策以前の泥沼であえいでいるのは見苦しい限りである。出直すことができるかどうかは、議員一人ひとりの覚悟にかかる。かつての民主党らしい自由闊達(かったつ)な議論を巻き起こす契機とするのでなければ、生方騒動の教訓は生かされない。
ネット空間に、人々の自由を制限するために国境を設けようとするのは、時代に逆行することである。
「検閲」で情報の出入りを制限しようとする中国政府と、「自由」を掲げる米グーグル社による交渉は、双方とも譲らず物別れとなった。グーグルは中国本土でのネット検索サービス事業からの「撤退」を決めた。
中国当局がネット規制にこだわるのは、天安門事件やチベット騒乱など自らの統治に都合の悪い情報や映像が流れるのを恐れているからだろう。中国最高人民検察院(最高検)のトップは最近、国家の安全を脅かす犯罪のひとつとして「ネット利用」をあげた。
だが、ネット社会の発展に逆らうような検閲をいつまでも実施できると考えているとすれば、中国共産党・政府指導部の認識は誤りだ。
グーグルは今年1月、中国版検索サイトへの検閲が続いていることや、サイバー攻撃が激しくなっていることを理由にあげて、中国版検索サイトや現地法人を閉鎖する可能性があると発表。中国側と交渉を続けてきた。
しかし、検閲について交渉の余地がないことが明らかになり、ネット検索サービスの停止に至ったという。
中国でネットを管理する国務院新聞弁公室は逆に、グーグルが中国市場に参入する際に検閲を受け入れたことを指摘し、グーグル側に不満と憤りを表明する談話を発表した。
中国はすでに4億近い利用者「網民(ワンミン)」のいる最大のネット国だ。ネットは様々な情報や意見が流れる、中国の人々の暮らしに欠かせない血管となっている。そもそも胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席自身、「時間をつくってネットを見ている。網民の関心を知るためだ」と語り、その必要性を肯定している。
自由な情報の流れを阻害すれば、いずれ経済発展にも足かせになろう。
中国当局がネットに神経をとがらせる理由には、長期的なIT戦略もある。米企業に過度に依存すれば、安全保障にも影響しかねない。グーグルに対しては、世界からかき集めた利用者情報を独占する「情報支配」への警戒感も強いようだ。とはいえ、世界第2の経済大国になろうという中国が、今後の世界でのITの重要性に背を向けることはできまい。
グーグルは中国本土からの検索事業撤退にあわせて、大陸の利用者が中国版サイトにアクセスすると自動的に自己検閲のない香港版サイトに転送することにした。ただ、当局に管理されるプロバイダーが遮断するのは容易だ。
とはいえ、国境のないネットの世界。当局の規制をくぐり抜けて、ネットに巧妙にアクセスする利用者も増え続けている。
ネット上に「侵略」を防ぐ万里の長城は築けまい。