HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 62347 Content-Type: text/html ETag: "bdc19-15c5-882b5600" Expires: Sun, 21 Mar 2010 03:21:06 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sun, 21 Mar 2010 03:21:06 GMT Connection: close 派遣法改正案 禍根を残した労使合意の修正 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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派遣法改正案 禍根を残した労使合意の修正(3月21日付・読売社説)

 労働者派遣法の改正案が閣議決定された。改正案の作成は、異例ずくめの経緯をたどった。

 厚生労働省の審議会で労使の委員が折り合った改正案の一部を、与党3党が削除したのも、その一つだ。

 削除されたのは、派遣会社が長期雇用する労働者について、受け入れ先の企業が事前面接できる規定だ。社民、国民新両党が「派遣労働者への差別を助長する」と強く主張した結果である。

 経営側が説明するように、業務への適性を判断でき、派遣労働者の処遇改善にもなるのだが、問題は制度の是非ではない。

 労働政策は労使の議論を尊重して決めるのが、国際労働機関(ILO)の精神である。労働政策は企業の経営や従業員の暮らしに直結する。労働の現場に精通した労使による審議会決定を政治主導で覆すのは、筋が違う。

 与党の対応は、労働政策の決定に大きな禍根を残した。

 さらに、審議会答申で、改正の主要部分に経営側の反対意見が付記されたことも異例だった。

 経営側は、派遣会社に登録し、仕事をしたときだけ収入がある登録型派遣の原則禁止や、製造業派遣が、1年以上の雇用見込みがある労働者などを除いて禁止されることに、一貫して反対した。

 厚労省の意向などを受け、渋々合意したのが実情である。

 改正案には日雇い派遣の禁止も盛り込まれたが、これらの規制強化には、労働組合や労働問題の専門家の間にも批判が多い。

 例えば、中小企業では急な発注や季節変動に対応できず、経営に深刻な影響を及ぼす。雇用機会の選択肢が狭まり、労働弱者と言われる人や女性、学生への打撃が大きい――といった意見だ。

 改正で、登録型派遣の労働者など44万人の仕事が失われるという厚労省の試算がある。その通りなら、極めて重大な問題だ。アルバイトや請負、期間工などの働き方に変わるだけなら、雇用の不安定さは変わらない。

 しかも、求人求職の手間が少なく、迅速に必要な人数を仲介できた派遣の機能を、ハローワークなどが担えるわけがない。

 派遣切り問題などを受けて、派遣労働者の処遇改善や業界の健全化を目指す前に、一気に「派遣はけしからん」という感情論から始まった改正論議だ。

 政府は、改正案への様々な疑問に何も答えていない。労働市場に混乱は起きないかどうか、国会で十分な審議が必要だ。

2010年3月21日00時57分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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