金融規制をめぐる米議会の動きが大詰めに入ってきた。上院銀行委員会のドッド委員長は、銀行の自己売買の禁止などを盛り込んだ法案を提出した。大規模な危機の再発を防ぐため、米国がどんな仕組みをつくるか。日本にとっても目が離せない。
米国の金融規制改革法案は下院がすでに可決している。上院では与党民主党が安定多数を持っていないため、ドッド委員長が超党派の法案づくりを目指したが、話がまとまらず委員長が単独で法案を提出した。
法案では、銀行による自己勘定でのリスクの高い取引やヘッジファンドへの投資を禁止する。ボルカー元連邦準備理事会(FRB)議長の提唱するルールを取り入れたものだが、FRBの監督下にある銀行以外の金融機関にも同様の規制を課す。
大手金融機関の連鎖破綻の防止を狙った金融安定化監督評議会の創設もうたう。破綻した際に粛々と店じまいするために、大手金融機関に対し、いわば「生前の遺言状」を用意するよう求めた。FRBに個別行の救済を禁じたのも注目される。
金融機関の監督は、資産規模で線引きした。FRBが資産500億ドル超の金融機関を対象とし、資産がそれに満たないところは連邦預金保険公社(FDIC)や通貨監督庁(OCC)が担当する。
利益を追求し規模の拡大を図ったあげく危機に陥った金融機関を税金で救済するような事態は、二度と起こすまい。法案からはそうした決意が伝わってくる。金融界の予想に反して、ボルカー・ルールを採用したのは決意の表れだろう。
もっとも、法案の中身には議論の余地がある。例えば、金融監督体制を資産規模の大小で分けるのは妥当なのか。現にFRBは「中小金融機関にも目を光らせてこそ、金融全体の健全性を維持できる」と注文を付けている。
オバマ大統領はボルカー・ルールに基づく金融規制に熱意を示すが、その前に医療保険改革法案を成立させられるかどうかの瀬戸際に立っている。医療法案が成立すれば金融規制法案にも弾みが付くものの、否決されるようなら政権の屋台骨が揺らぐ。米議会の動向は文字通り広範な政策の命運を決しようとしている。