HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 60581 Content-Type: text/html ETag: "fd18e-1209-b6bdba80" Expires: Sat, 20 Mar 2010 03:21:14 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Sat, 20 Mar 2010 03:21:14 GMT Connection: close 3月20日付 編集手帳 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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3月20日付 編集手帳

 三島由紀夫には、すし屋でマグロのトロをえんえんと注文しつづけた逸話がある。店側は、あとの客に出す分がなくなって困った――と◆嵐山光三郎さんの『文人悪食』(新潮文庫)によれば、〈三島嫌いの人のあいだで、三島批判の(うわさ)話としてよく持ち出された〉というから、いくらか誇張が交じっているのかも知れない◆噂の真偽はともかくも、トロを偏愛する「作家」と、ネタ切れを警戒する「他の客」という構図は今日的である。最高級クロマグロの消費大国・日本と、絶滅を心配する米国や欧州連合(EU)の対比そのままだろう◆ワシントン条約の締約国会議で日本の主張が通り、「禁輸」は見送られるという。マグロをジュゴンやパンダと同じ絶滅危惧(きぐ)種とみなすのは土台むちゃな話で、安堵(あんど)した人は多かろう。短兵急な禁輸論議を再燃させぬよう、日本は乱獲防止など資源管理の先頭に立たねばなるまい◆“トロ伝説”の作家は「ワッハッハ」の豪傑笑いでも知られた。宿題の重さを思えば、外交舞台を巧みにこなした日本政府の場合はひとまず、「ニッコリ」でとどめておくのがよさそうである。

2010年3月20日01時19分  読売新聞)
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