思慮を欠く大人げない“党風”はとても褒められたものでない。民主党執行部が小沢一郎幹事長を批判した生方幸夫副幹事長に辞任を迫り、拒まれたので解任するという。はた目にも嫌気がさす。
副幹事長の職を解かれた生方氏が責めを受けたのは、十七日付の産経新聞に掲載されたインタビューでの発言だ。
小沢幹事長に権限が集中しすぎている党の運営の在り方に異を唱え、小沢氏をめぐる政治とカネの問題についても内外の批判的な空気をそのまま述べている。
党役員の公的発言としてはかなり思い切った内容ではあるが、とやかく辞任を迫るべきほどのものとも思えない。強いて挙げれば、反小沢・反民主色の強いメディアでの発言という意味で、挑発的だったといえるかもしれない。
“処分”はその発言掲載の翌日のことだ。そこに執行部の感情的で過敏な反発がうかがえる。
高嶋良充筆頭副幹事長が生方氏を党本部に呼び出し、辞任要求を拒否されると、他の副幹事長全員を集めた会合で、直ちに生方氏の解任を決めている。
高嶋氏によれば、小沢氏は穏当な処理を希望したというが、それ以上の異議は挟んでいない。党代表の鳩山由紀夫首相も、党内で議論すべきことを党外に述べるのは好ましくないとして、執行部の決定を是としている。
理屈はわからないでもないが、気になるのは高嶋氏らが小沢氏の意向を忖度(そんたく)して「反小沢分子」の排除に走ったのではないかという点だ。
党の支持率低下を招いた政治とカネの問題の渦中にある小沢氏が自身の進退をめぐってナーバスになっているのは想像がつく。
もしも周囲が気を利かせて批判を封じる意図があったとしたら、自由な言論を阻む恐怖政治が常態化しているのではないか、との疑念を裏付けることになろう。
執行部は生方氏の処分決定にあたって、このことがメディアにどう扱われるか検討はしたようだ。しかし、国民や党内への丁寧で細心のメッセージを欠く。
そこにこの党の言論・報道への無神経で危うい体質が見える。首相の誇りたい「民主党らしさ」がそれでは、いかにもまずい。
権力が特定の実力者に集中し、取り巻きがその威を借りて政権党を差配する。物言えば唇寒し、が党風となれば、民心は離れ、待っているのは自滅の道である。
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