一九九九年にスペインのセビリアで行われた世界陸上女子マラソンで優勝したのは、北朝鮮のチョン・ソンオクという選手▼帰国した彼女にはさまざまなものが贈られた。当時の記事によると、「英雄」称号、金星メダル、国旗勲章第一級、人民体育人称号、金時計、高級乗用車、高級住宅…▼同じ国で最近、労働党計画財政部長が銃殺刑にされたらしい、という恐ろしい情報がある。何でもデノミ、つまりは経済政策に失敗したかどだとか。上げる時は徹底的に上げ、下げる時はとことん下げる。何とも極端▼こうした「極端さ」は未成熟の証しだろう。国でも社会でも個人でも、“大人”は「ほどほど」にしておくものだ。何かでもめても、すぐ「戦争だ」と叫ぶような極端な態度はとらない。極端な決めつけも極端な見方も避けてこそ、“大人”だ▼例の、大西洋・地中海クロマグロを「全面禁輸」にするとの提案もいささか極端だった。ワシントン条約締約国会議の委員会でその案は否決されたそうだから、とりあえず世界は“大人”の判断をしてくれた、といえる▼もっとも、海洋資源保護や乱獲防止が大事なのはその通りで、クロマグロの八割を消費する日本は、その面で一層の責任を果たす必要がある。多分、今の極端なマグロ偏愛も改め、「ほどほど」にしておかないとまずいのだろう。“大人”としては。