♪探しものは何ですか?見つけにくいものですか?…。井上陽水さんの名曲『夢の中へ』の一節である▼当節、見つけにくい探しもの、といって、まず思い浮かぶのは、仕事だろう。失業率は相変わらず高く、今春新卒者の就職難も深刻だ。例えば大学生の就職内定率は、卒業目前の二月一日時点でまだ80%。今なお就職活動を続けている学生たちの心中の焦り、察して余りある▼就職活動のことを「就活」と略す伝か、昨今、人口に膾炙(かいしゃ)してきた言葉に「婚活」がある。見つけにくい探しもの、といった時、次に来るのは結婚相手なのかもしれない。就職同様、自ら動く「活動」が必要らしい▼相手探しの難しさは、世上、婚活のセミナーがにぎわい、指南書が売れていることでも察せられる。ただ、婚活の“人為性”に違和感を覚える人もいないではない。例えば最近、新聞の発言欄で読んだ二十二歳の女子大生の言葉。<…結婚は自分の力で手に入れるものではなく、縁だと考えているのです…>▼「縁」。広い世界で人と人が出会い、時に結ばれるということの神秘性を、これほど簡潔に表した見事な言葉はない。そう思えば、確かに「活動」には、いささか強引な人為の響きがあるのは否めない▼あの曲の別の一節だ。♪探すのをやめた時、見つかる事もよくある話で…。縁とは、多分、そういうものなのだろう。