HTTP/1.0 200 OK Age: 327 Accept-Ranges: bytes Date: Thu, 18 Mar 2010 21:15:44 GMT Content-Length: 7627 Content-Type: text/html Connection: keep-alive Proxy-Connection: keep-alive Server: Last-Modified: Wed, 17 Mar 2010 14:50:16 GMT NIKKEI NET(日経ネット):社説・春秋−日本経済新聞の社説、1面コラムの春秋

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春秋(3/18)

 直訳だと「私を暑くする」、普通は「私を喜ばせる」という意味で使われる言い回しが、フランス語にあるそうだ。ところが、西アフリカの旧フランス植民地に行くと、同じ言葉なのに「怒らせる」の意になる。最近そんな話を聞いた。

▼代わりに「私を寒くする」と言えば、かの地では「喜ばせる」の意味なのだ。なるほど、熱帯の高温は成句をも変えてしまうらしい。さいわい日本は、暑くしてもらわなくてもまた寒くされずとも、あるがままで心浮き立つころ合いになってきた。「暑さ寒さも……」といわれる、きょうが春の彼岸の入りである。

▼東京都心に近い小石川植物園では、ウグイスがこずえ高く鳴きカワセミは水上低く飛んでいる。盛りのサンシュユをはじめ、なぜか黄色い花が目立つ。次に控えるソメイヨシノのつぼみははじけんばかりだ。「ことしもメダカがこんなに生まれた」と、お年寄りが細かいパンくずを池に放ってはにこにこしている。

▼そういえば、フランス語にはこんな成句もあった。直訳すると、「それは私を暑くも寒くもしない」。その意味するところは、「私にはどうだっていいことだ」。いや、どうだってよくないと日本人は思うだろう。暑くも寒くもないことの心地よさ。ありがたさ。「ころは3月」という。この季節、笑顔が似合う。

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