HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 17835 Content-Type: text/html ETag: "3513d6-45ab-5ffab580" Cache-Control: max-age=5 Expires: Thu, 18 Mar 2010 21:21:11 GMT Date: Thu, 18 Mar 2010 21:21:06 GMT Connection: close
Astandなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
桃太郎はイヌ、サル、キジを引き連れて鬼退治に向かう。ある目的のためにチームができ、各自が持ち味を生かして大願を成す筋立ては、活劇の王道であろう。滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」、黒澤明の「七人の侍」など、傑作は数知れない▼目ざす世の中を胸に、苦難を越えて突き進むのは政党も同じである。無論、金やポストの「きび団子」に釣られた仲間もいる。民主党の冒険ドラマは、鬼が島に着いてからが締まらない。宝の山で寝ているなら、次の桃太郎が取りに行くだけだ▼ところが、次になるべき自民党がいけない。きび団子が尽きて支持団体は遠ざかり、離党議員は元大臣を含めて6人を数える。新党という脱出ボートが出たり引っ込んだり、余計なことで騒がしい▼かつての社会党を見るようだ。党勢が衰えると党名を変え、さらに小さくなった。政権を追われた自民党も、「和魂党」や「自由新党」をまじめに考えたらしい。賞味期限が切れたのは当事者がよくご存じだ▼保守合同で汗をかいた三木武吉は、結党後の演説で訴えた。「旧態依然たる民主党と自由党を解体して、寄せ木細工式に自民党と名づけただけだ……政党を若返らせなければならぬ」。だが、その党は寄せ木のまま長期政権にあぐらをかき、見放された▼こんな逆境こそ観衆を熱くする見せ場なのに、新たな物語に踏み出すどころか一人抜け、二人去り。桃太郎の旅を逆回しで見せられているようだ。そのうち桃の中に閉じこもり、どんぶらこと川上に消えかねない。まじめにやってほしい。