昨年九月の発足から半年を迎えた鳩山政権。発足時に70%を超えた内閣支持率は低落傾向が続き、今月に入り40%を割った。国民の信頼回復には、民主党らしさを取り戻す必要があるのではないか。
なぜ支持率は下がるのか。鳩山由紀夫首相は「『政権交代したのに、民主党らしさが見えてこない。前と変わらないじゃないか』という思いが国民に広がっている」と語り、民主党らしさに「歯切れの良さ」「政治を変えるという原点」「頑張る精神」を挙げる。
有権者が抱く民主党らしさは個々に違うだろうが、そのイメージと、政権交代後の民主党の実像とのギャップが、支持率低落につながっていることは疑いない。
新政権発足からの半年を振り返ると、事業仕分けや日米密約検証などは、政治家が前面に立ち、「歯切れの良さ」を見せた。政権が掲げた「官僚主導から政治主導へ」の成果でもある。
子ども手当や高校授業料無償化などのマニフェスト政策も、実現へ国会審議が進む。異論も残るが、約束を守ることが政治への信頼回復の大前提であり、民主党らしさの発揮と言っていい。
しかし、首相や小沢一郎幹事長をめぐる「政治とカネ」の問題では民主党らしさが感じられない。
民主党はこれまで「政治とカネ」や政治倫理に、厳しい態度で臨んできたはずだが、政権に就いた途端、身内に甘い印象がぬぐえない。政権交代に「政治とカネ」の問題からの決別を託した有権者にとっては裏切り行為である。
公共事業の個所付けでは、党幹事長室が各都道府県連を通じて地方自治体に伝え、自民党時代と変わらぬ利益誘導と批判された。
民主党は一九九六年の結党以来「市民が主役」を掲げ、政官財癒着の政治から自立した市民による政治への転換を目指してきた。
その民主党に二〇〇三年に合流したのが、自民党旧田中派の流れをくむ小沢氏が率いる自由党だ。
政権奪取や政権運営には、与党経験豊富な小沢氏の剛腕が必要とされてきたが、民主党らしさ喪失の背景に小沢氏の存在が影を落としているとしたら残念だ。
権力を集める小沢氏に自由にものが言えず、参院選勝利を最優先するあまり与党風を吹かすのは、民主党に期待される姿ではない。
取り戻すべき民主党らしさとは政治に理想を追求する「市民らしさ」であってほしい。与党に染まって理想を忘れては困るのだ。
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